小説 | ナノ


▼ 成れの果て

※ご都合血鬼術で炭治郎が分裂(♂+♀)し義勇さんが喜ぶ話。
※義勇×炭治郎♂♀による3Pあり。






鬼の首を一閃。
ぽとり、と畳の上に落ちた女鬼の首。うるうると涙を流しながら恨み言を言う訳でもなく煤になって消えようとしていた。任務内容は「山奥に潜む人喰い鬼を殺すこと。しかし複数の可能性あり」と鎹烏から伝わっていた。その命令通り、少し前によく似た顔の男型の鬼を倒している。

炭治郎は汗を拭い顔に出来た傷から流れて来る血を袖で擦った。
それ程強くはなかったが、厄介なのは二人いたこと。疲弊したところにもう一体、女鬼が現れて手古摺ったくらいである。

「悔しい、悔しい、せっかくきれいな顔の男子を見つけたのに、」

小さく囁くような声が炭治郎の耳に届いていた。

「もう一人の妾もカアイソウ、きれいなのに、お前も分かる、なれば分かるわ」

消えゆく女の顔に青筋がくっきりと浮かんだ。突如として匂った激しい殺気に炭治郎は日輪刀を構えた、予想だにしていない攻撃に一歩で送れた。女の舌が伸びて炭治郎の体を絡めとり首が飛んできた。「ヒッ、」と思わず炭治郎は息を呑む。
真正面から女の目を見た。井戸のように仄暗い黒目の中に炭治郎はもう一人の自分を見た。






「――可能性としては、その鬼が元々一人の人間であったなら男女二つの性別に分裂したのでしょう。理由は分かりませんがそれが鬼の血鬼術。今の炭治郎くんを見ているとそう思います」
「そう、ですね」
「俺もそう思います」

しのぶは笑みを深める。
傷だらけの体を引き摺って蝶屋敷のしのぶのもとまで帰って来たのはつい昨日。すでに緊急の処置は終わり、あとは療養するだけだ。

「しのぶさん、善逸と伊之助は任務から帰って来てますか?」
「伊之助くんはつい先ほど。善逸君はおそらく今晩帰って来るのではないでしょうか。炭治郎くん」

丸椅子に腰掛ける炭治郎の隣りに、炭治郎が座っている。傷一つなく花のような笑みを浮かべてしのぶを見つめている。時に居心地悪そうに顔を俯かせる炭治郎に、炭治郎は労いの言葉を掛ける。全く同じ顔が二つ。唯一違うのは身体的に真逆であることくらいだ。この不可思議で滑稽な光景は一生味わうことはないだろう。
すでに炭治郎が二人いるという話は隊士たちに伝わっており、女体の炭治郎を見ようと数人の隊士たちが意味もなくふらふら歩きまわっているくらいだ。

「日光に当たっても平気と言うのは不思議ですね。人間である炭治郎くんから分裂したから、日光は問題ないということなのでしょうか」
「どうなんでしょう。でも、不思議と嫌じゃないって言うか、もう一人家族が出来たと思えば」
「禰豆子も喜ぶよね」
「それもそうか」

血鬼術とはいえ、和やかな光景だ。炭治郎が二人いても嫌がる人間はいないだろう。女の炭治郎は少し小柄でなよやかな身体をしている、額にある痣も胸元にある三本の傷もそのままそっくりだ。

「冨岡さんには報告しましたか?」
「え?なんで義勇さんに?」
「あら、伝えておくべきでしょう。大事な恋人が血鬼術で分裂したなんて異常事態、黙っておくのは可哀想ですよ」
「こっ、!」

二人は同時に顔を赤くした。
もう一人の炭治郎は見た目も一緒だが、思考回路や記憶も共有しているようだ。自分が冨岡義勇の恋人である自覚もあり二人は揃って「義勇さんの手を煩わせるなんて」とぶつぶつと零している。
そうしていると診療所の扉がガラリと開き顔を出したのは噂の冨岡義勇その人である。うっすら額に汗をかき、僅かに胸の鼓動が激しい。

「「義勇さん!!」」

炭治郎は二人同時に彼の名を呼んだ。女になっている自分も親し気に下の名前を呼ぶものだから、思わず彼女の横顔を睨み付けた。

「お早い御着きで。さすがですね」
「胡蝶の鎹烏から文を、もらって・・・」

"拝啓 冨岡義勇 殿  竈門炭治郎くんが血鬼術により分裂しその内一人は女性の形をしています。一度蝶屋敷へ足を運ばれたし。 胡蝶"と文を貰ったのが数時間前。わざわざ掛け持ちしていた任務を不死川に押し付けて帰って来たのだ。
しのぶの言う通り、目の前には竈門炭治郎が二人。キラキラした赫い宝玉のような瞳が義勇を見上げている。それも四つ。

「嬉しそうな、匂いですね」
「うん。でもちょっと困った匂いも混じってる」

二人は互いに頷いた。まるで双子のようだ。
かわいい年下の恋人が二人もいるなら、それはそれで申し分ない。寧ろご褒美だ。自然と鉄面皮が剥がれ鼻の下が伸びていく。

「と、み、お、か、さん!」

しのぶが同僚の名前を呼んだ。そこで我に返った義勇は「いつこれは戻るんだ」などと至極普通な質問を投げ掛けた。

「昨日のことですからね。いつ消えてもおかしくないですよ」

しのぶは女の方の炭治郎に視線をやる。

「俺、消えちゃうんですか?」
「う、うーん・・・・鬼はもう倒してるから」
「そうなんだ」

自分から発せられる酷く悲しい匂い。人を食い傷付けてきた鬼の術によって作られたもう一人の自分は同じ思考と記憶を所持している。感情があり、そして目の前の男を同じく慕っている。突っ撥ねるにはあまりに可哀想だ。
炭治郎の持つ広い慈愛の心が放っておけるはずもない。

「で、でも俺達二人いれば一緒に強くなれるし、禰豆子にももう一人家族が出来るから喜ぶと思う!」
「そうかな?」
「だって俺だから!炭治郎、お前は長女だろ!俺も長男なんで!」

長女という言葉に弱いらしい。そこも炭治郎と一緒だ。

「では二人の意見が一致したところで、冨岡さん、お二人をよろしくお願いします」
「俺が?」
「当然でしょう。炭治郎くんがあなたの大切な人です。それに鬼を倒しているなら私がこれ以上手を尽くす必要もありません。あとは時が解決してくれるでしょう」

面倒事を丸々放り投げられたと感じたのはこの場で義勇だけだ。
炭治郎は弟弟子として、恋人として、義勇の屋敷に居候のような形で滞在しているようなものだ。あの広い水柱の屋敷にもう一人同居人が増えた所で支障はない。それに炭治郎だ。何の問題もない。

「ここの蝶屋敷の方が人の出入りが激しいので人目に付くことも多いですからね。ただでさえ人を惹き付ける力のある炭治郎くんですから、それが女の子となれば、皆放っておかないでしょうね」
「よし、炭治郎。俺の屋敷に行くぞ」

義勇は二人の肩に手を置いた。
これ以上何らかの理由を付けられて二人の時間を邪魔されたくはない。恋人になっても、みんなの飯を作らなきゃだの、隠の人たちと隠里に行ってくれるだの、炭治郎の交友関係は幅広い。
どうせなら三人での時間を有意義に過ごしたい。
炭治郎は二つ返事で了承し義勇の後を付いて行った。





「たあぁんじろおぉぉ!!」
「善逸!?随分帰りが早いんだな!」
「聞いてくれよーぉ!めちゃくちゃ強そうな鬼だったのに!俺、気絶しちゃって、目覚めたらいないんだよオォ!怖いよォ!」
「だから、それはお前が倒したんだって・・・」

早めに任務が終わり予定より早く帰って来た善逸は蝶屋敷の門の前で炭治郎に会った。少し後を水柱が付いてきていたが、どうしても炭治郎にこの出来事を伝えたかった。最近どうにも多い。気絶して全てが終わっていると言う不思議な出来事が。

「善逸は強いんだから自分を信じないと」
「俺は強くないんだよぉ!」
「俺は分かってるよ。お前が強いの。ね、炭治郎」
「あ、うん」

腰にしがみ付いていた炭治郎から発する声ではない。誰よりも耳の良い善逸がいつもより少し声の高い、だが炭治郎によく似た声を探す。静観する冨岡義勇の背後から顔を出すもう一人の竈門炭治郎に善逸は「ギィヤアアア!!」と悲鳴を上げた。

「善逸!うるさいぞ!義勇さんに失礼だぞ!」
「た、た、た、炭治郎!?でも、この音・・・ッ、いや、ちょっと待てよ!」

善逸の目が極限まで開かれる。隣りにいるいつもの炭治郎とは違い体の線が細い、同じ鬼殺隊の隊服でもきゅっと腰は締まり何よりも胸元との豊かな膨らみが異なる。「なにジロジロ見てるんだよ」というコロコロと鈴の鳴るような音に善逸は電流が走ったような衝撃が走る。

「炭治郎のお姉さまですか!?」
「違うぞ」
「双子!!」
「俺は六人兄弟だ」
「なら、この子誰!?炭治郎と顔全く一緒なんだけど!でも、ちょっとかわいい」
「善逸!しっかりしろ!」

男の炭治郎が善逸の背中を叩いた。
激しく動揺する友人に鬼の血鬼術によるものだと説明し、術が消えるまで水柱の屋敷で世話になることを伝えた。

「冨岡さんのお屋敷で・・・へぇ」

相変わらず心の読めない顔で立っているこの男が炭治郎の秘密の恋人であることは善逸は聞かされていた。真逆の性格を持つ二人が上手くやっているのは、まさに真逆であるからなのだろう。心なしか、男女に分裂した恋人に挟まれて幸せそうな音が聞こえてきた。

「一日二日で消えるもんなの?」
「さあ、あまり人目に晒すと余計な誤解を招くからしばらくは義勇さんの家にいてもらうつもりなんだ」
「俺がいたら迷惑なのか?」

女の子の炭治郎が義勇や善逸を見上げた。
心なしか背の低い炭治郎の上目遣いに善逸の鼓動が高鳴った。自分自身から鳴った音に、開けてはいけない扉が開きそうでぐぬぬ、と耐える。その様子を炭治郎が冷たい視線を送っていたことに気付いてはいない。

「め、迷惑じゃないよぉ〜、えへへへ、よく見ると禰豆子ちゃんに似て、かわ」
「善逸」

炭治郎がゆっくりと首を横に振り視線だけでもう一人の男を指す。

「っはあ゛!?すみません!俺は何も!!」

水柱、冨岡義勇の強烈な視線と音に善逸は息を呑んだ。

「じゃ、じゃあ俺達は行くよ。善逸。また落ち着いたら話そうな」

兄弟子ともう一人の自分の背中を押して炭治郎はその場を離れようとした。常日頃表情のない冨岡義勇が、親の仇でも見るような視線を送ってきたことに驚いた。二人もいる炭治郎は全部自分のものだとでも言うのか。
いや実際そうなんだろう。
ここ最近は任務と稽古以外で炭治郎と会える日はほとんど無くなった。

「ああ、禰豆子ちゃん探そ・・・」

どこかの誰かさんが凶悪な音を発する前に。






水柱邸に居候していると言っても過言ではない。
炭治郎はそれ程までにこの家自体を熟知している。時に義勇は「あれどこだ」「これはどこなんだ」と尋ねても炭治郎は全てを的確に答えることが出来るほどだ。
そんな世話焼きの炭治郎が家に二人もいることを想像できただろうか。

「義勇さん!今日の夕飯は」
「義勇さーん!お風呂沸かして」

自室で着替えをしていた時、襖が遠慮なく開け放たれ同じ顔が二つ覗き込んだ。
そして互いに顔を見合わせて頬を膨らませた。

「いつも義勇さんは食事の前に風呂入るんだ。知ってるだろ」
「それは任務帰りの時で普段は夕餉を先に取る事だってあるんだ。知らないのか。俺のくせに」

先に夕飯でも風呂でもどっちでも構わない、と答えると素早く手を取ったのは女の炭治郎だった。

「お風呂行きましょう!お背中お流しします!」
「え?」

義勇の手を引き風呂場へ案内するもう一人の自分の背中を見つめ、炭治郎は慌てて追いかけた。

「ま、ま、待ってください!風呂なら俺も一緒に入ります!」
「あ、ああ、それは」
「なんで?俺に任せてよ。お前は義勇のご飯作る担当だろ?」
「そ、そうだけど!でもダメなんだ!一緒にはダメだ!」

同じ炭治郎とはいえ、風呂場に連れて行こうとしているのは女の方だ。
血鬼術で分裂した方が色仕掛けで柱の首を取ろうと画策しているかもしれない。それがあの女鬼の最終的な目標かもしれないと思うと、二人だけで風呂に行かせるなんて許せなかったのだ。

「なら、俺がご飯作ろうか?」
「う、それは・・・・」

食事に毒でも入れられるかもと勘繰って食事の支度は自分でやると譲らなかった。
てっきり風呂の火を炊くばかりで一緒に入るとは予想していなかった。

「炭治郎、問題ない。直ぐ戻る」
「そう、ですか・・・」

義勇は炭治郎を連れだって風呂場に向かってしまった。本人が良いと言えば止める権利など無いに等しい。
「家族が出来た」なんて言っておきながら結局のところ信用なんてしていない。鬼の術で現れたもう一人の自分、あの女鬼が施した最後の力が自分にとって利益のあるものとは思えないからだ。

「あ、飯、忘れてた・・・」

炭治郎は勝手場に向かい中途半端な煮物の火加減を見に戻った。



義勇はうっかり忘れていた炭治郎の性別に頭を抱えた。
ちょうどいい湯加減の湯に肩まで浸かっていると引き戸の向こう側に人影が見えた。「お背中お流ししますね」と声が掛かり、義勇は「頼む」と返事を返し体を上げた時だった。ガラリと引き戸が開き義勇は思わず湯船に戻る。

「おい!!」
「はい?」

素っ裸の炭治郎。それはいいのだが、女体であった。
なんの隠しもせずに堂々と風呂場に入ってきて桶を持ち湯船の側に正座した。

「義勇さん?」
「か、隠せ!手拭いかなんかで、このバッ」

バカ!と怒鳴ってやりたかったが真後ろにいた炭治郎の艶やかな表情に声を無くした。あれ、こんな子だったかなと思いつつも義勇は前を向き「俺には無理だ」と深く湯船に浸かった。結局炭治郎は白い襦袢を羽織って戻って来た。

「女性の裸なんて見飽きてるかと思ってました」
「俺はお前が思うほど経験はない」
「俺の体、そんなに良かったんですか?助平ですね」
「お前・・・」

手拭いで背中を拭いながら炭治郎はそう言った。

「俺が偽物なのは分かってます。だけど偽物だって俺は俺なんです。義勇さんに愛される権利はあると思うんです」
「・・・・・・」
「いずれは消える身です。それまでは置いてやって下さい」

自らを諭すような物言いに僅かに同情した義勇は後ろを振り返る。
赫灼の瞳、父の形見の耳飾り、胸元には大きな傷跡。全く同じ形をしていながらそれは偽物だと言う。炭治郎や胡蝶が「首を落とせなかった」というのもよく分かる。

「お前が二人いても困る者はいないだろ」
「そうですか?そんなの分かりませんよ」
「分かる。俺は」

義勇の背中に温かな湯が掛けられる。もう一度湯に浸かろうと立ち上がった時、つるりと足を滑らせて前のめりになった。「危ない!」と叫んで受け止めたのは炭治郎だ。
桶のひっくり返る音、そしてドスンと二人分の人間が転ぶ音が聞こえ勝手場にいた炭治郎も慌てて風呂場へ向かう。

「義勇さん!?なっ、」

裸の義勇が炭治郎を押し倒している。お湯が体に掛かったせいで襦袢はぴったりと炭治郎の体に張り付きふっくらとした乳房を浮かび上がらせているのだ。義勇の顔は見事にその谷間に埋まり、彼女の体を守ろうと背中に大きな手が回っている。

「あ、炭治郎」
「う゛、ち、違う。これは俺が滑って転んで、」
「義勇さんが庇ってくれたんだ。俺も受け止めたけど頭ぶつけそうだったから」
「へ、へえー、そうなんですか」

炭治郎はやや乱暴に風呂場の引き戸を閉めて勝手場に戻った。
風呂場の中から「炭治郎!」と叫ぶ声が聞こえたが当然ながら無視を決め込んだ。






まるで通夜のような夕食を終え、義勇はようやく寝床で一人になることが出来た。
風呂場での一件もあり炭治郎は女の方に近付けさせまいと義勇の膳を自分の方に寄せた。それに怒った女の炭治郎が義勇ごと体を引っ張ってあの豊かな胸に閉じ込めたのだ。同じ顔の恋人に取り合いにされると言う夢物語のような光景であったが、それを楽しめるほど義勇は軟派者ではなかった。

「どっちが好きですか!?」

と、挙句の果てには問い質され「炭治郎が好きだ」と答えるもののそれじゃあ納得できないと怒られた。
仲良くしてくれ、と頼んだが「何でですか!?」と二人がキレられて収拾が付かなくなった。早々に食事を終えて逃げるように自室に戻って来たのだった。
一人布団を敷きそこへ座り日輪刀を手入れをしていると静かに襖が開く音がして振り返る。

「炭治郎か」
「はい、義勇さん」

枕を一つ持っていつもの炭治郎が現れた。

「もう一人は?」
「寝てると思いますよ」
「そうか」
「抜け駆け無しって約束したけど直ぐに破っちゃうなんて俺駄目ですよね。どうしても会いたくなってしまって」
「いや、そんなことは無い」

任務のすれ違いであまり会う事が出来なかった。
この件が無ければ炭治郎もまた別の任務に飛んでいたことだろう。新人隊士とはいえ、下弦の鬼を倒した功績もあり炭治郎を含め我妻善逸も引っ張りだこである。義勇と同じ時間を共有することも徐々に難しくなり始めてきた。

「一緒に、寝てもいいですか?」
「ああ、もちろんだ」

義勇は日輪刀を柄に戻し枕元に置く。
炭治郎は自ら持って来た枕を隣りに並べて布団に入った。人工的な電灯をあまり好まない義勇は行灯の光だけを残し、自身も布団に潜り込む。冷たい足がぴとりとくっつき炭治郎はくすくすと笑った。

「コラ、よせ」
「いいじゃないですか」

ぴったりと身を寄せてきた炭治郎。まるで何かを期待するかのような上目遣いに義勇は口元を手で押さえる。義勇はゆっくりと炭治郎の頬に手を添えて口付けをしてやる。ちゅちゅ、と啄むようなものから、舌を差し出して来たのは炭治郎の方からだった。

「んっ、ぎゆう、さん」

たまらなくなった義勇は炭治郎の腰紐を解き平たい胸に手を這わせる。すでに固くなった乳頭を指先で摘まみ、くにくにと押し潰す。

「あっ、ううっ、」
「感じてるか。炭治郎」
「は、はい・・・っ」

ぷっくりと膨れ上がったそれに舌先で吸い、歯を僅かに立てた時だった。

「抜け駆け禁止!!」

乱暴に襖が勢いよく開いた。
炭治郎が仁王立ちで今まさに交合おうとしていた自分たちを見下ろしていた。

「ぎゃあ!何入って来てんだ!お前!」
「そっちこそ!義勇さんの寝所に行くのは禁止な、約束だぞ、とか言っておきながら何抜け駆けしてんだ!」
「お前を絶対に行かせるわけにはいかないからだ!ダメなんだ!」
「自分はこれから先も一緒にいられるんだから今日くらい貸してくれてもいいだろ!」
「そういう問題じゃない!義勇さんはお、れ、の恋人なんだ!」
「俺もそうだー!!」

真夜中に炭治郎のよく通る声で騒がれては近所迷惑である。
水柱の屋敷は近隣より離れており周囲には竹林が生えてはいるものの、誰が側を通っているかは分からない。特に一番近い蝶屋敷にはあまり迷惑を掛けたくはなかった。

「い、一緒に寝よう!それで問題ないだろう」
我ながら良い提案ではあったが女の炭治郎にある事を指摘される。

「魔羅をそんなにして説得力ないですよ」





一組の布団の上に三人。男が二人、女が一人。
その内二人は同じ顔をしている炭治郎だ。

「どこ見てるんですか!義勇さん!」
「すまん」

寝間着が乱れている炭治郎の胸元に自然と視線が動く。
風呂場で見た時と違い、仄かな明かりに照らされて女らしい体つきがどうにも色っぽくて知らぬうちに見つめていたらしい。炭治郎に叱責されて気付かされた。

「心狭いなぁ、俺。俺なんだから別にいいじゃないか」

炭治郎が近づいて義勇の前で寝間着を全て脱ぎ落した。
顔を真っ赤にしたのは義勇ではなく炭治郎の方だ。生まれてこの方、義勇の裸は見たことがあっても女体を見るのは初めてであった。

「俺、初めてなんて優しくお願いしますね」
「あ、あ、ああ」

義勇と口付けを交わしていると自然と大きな掌が体を撫でるように動く。

「んっ、」
「すまん」
「い、いいえ、きもちよくて、」

再度口付けを再開するとそれに嫉妬したのは炭治郎だ。「義勇さん・・・」と切なげに声を漏らすと空いている手で炭治郎を招く。もう一人の炭治郎と口付けを終えると、男の方を引き寄せて口付けた。舌を絡ませて歯をなぞり上顎を擽ってやると、二人とも同じ所で感じるような声を出した。

「どっちと先にしますか」
「お前を先に抱く」
「わぁ、嬉しい」

義勇が選んだのは女の方であった。少なからず衝撃を受けた炭治郎が口を開けて呆然としていると、「こいつは生娘だから時間が掛かる」と理由を付けて炭治郎を布団の上に押し倒した。
正直に言え、そっちの方が興味あったんだろう、と炭治郎は二人の交合いを傍で恨めしく見ることにする。

「女の方に興味ありました?男は飽きました?」
「いいや、炭治郎は炭治郎だ」

義勇の太い指が炭治郎の膣の中に埋め込まれた。何かを探るようにぐりぐりと奥へ進んでいくと、奥から溢れる水の音に義勇は口角を上げた。
ふっくらとした乳房に手を添えて乳首を摘まみ上げると「んん、」と甘い声が下から聞こえてきた。「感じる所は一緒だな」と言う呟きは本人には聞こえていないようだった。足を大きく広げさせ、濡れているそこに顔を埋めると「ああっだめっ」と非難する声が聞こえて来る。
義勇の舌が膣の周りを舐め上げ、秘核を探す為にぬるぬると生き物のように蠢いているのだ。

「ん、あっ、いやあっ」

男の炭治郎よりずっと高い声が部屋に響く。恥ずかしげもなく快楽に堕ちようとするのはそれぞれの違う所のように思う。女の方が布団の端で二人を見つめる炭治郎を見た。にこり、と笑った顔は自分の顔とは異なる異形の物のように見えたのだった。

「濡れるのが早いな、生娘のくせに」
「体が覚えてるんです。だって俺、炭治郎ですよ」
「そうだったな」

炭治郎の足を大きく開かせて見事に天を仰いだ魔羅をそこへ宛がった。体を仰け反らせて受け入れようとするもう一人の自分を見ながら、炭治郎は義勇が別の誰かと交わる事への強烈な嫉妬を感じた。

「ああっ、あーッ」
「柔い、な」

まるで義勇を受け入れる為のような場所だった。生娘のような狭さと遊女のような柔らかさを持つそこに義勇は汗を掻き、体が崩れ落ちそうになるのをなんとか堪えた。

「ん、んアッ、あっん、ぎ、ぎゆうさん」
「たん、じろう」

腰を掴んで無我夢中で女の陰を穿った。柔らかい肉の壁が収縮し、義勇の魔羅を強く締め付ける。炭治郎は背中を反らし腰を上げてもっと奥へと誘い込もうとする。揺れる乳房を掴み形がひしゃげる程に揉み拉いた。
一方で、炭治郎は初めて義勇が自分以外の誰かを抱く様を見た。背中や尻の筋肉が行灯の明かりに照らされていやらしく動き、自分のよく似た顔の女が快楽に涙している。自分とは違うしなやかな足が義勇の腰に回る。義勇が炭治郎を激しく犯す度に、肌のぶつかり合う音が部屋中に響き炭治郎は顔を赤くした。
(俺はいつもあんな義勇さんに抱かれてるんだ)
そう思うと自分自身の魔羅がむくむくと成長していくのが分かった。

「た、ん、じろう」
「!」

名前を呼んでいる。それが自分であると気付いたのは義勇が自分に手を伸ばしていたからである。

「来い」
「は、はい」

言われるがまま側に行き膝立ちのまま、義勇の口付けを受けた。

「んっ、」
「次はお前を抱いてやる」
「は、はい、おねがい、シマス」

壮絶な色気だ。熱に浮かされたまま義勇は炭治郎の足を折り曲げて腰を打ち付ける。

「アアッ、んやっ、あっあっ、ああっ、イッ、いっ」
先に脱力したのは組み敷かれていた炭治郎だ。その後に義勇。身震いして奥の方まで注ぎ込むような動きは炭治郎も何度か見たことがある。

「あっん、やや、できちゃう、」
「ああ、そうだな・・・っ」

魔羅がぬめりとした女陰から抜け出る。

「あんっ」
「次はお前だ。炭治郎」

ようやく自分の出番が来たと炭治郎は自ら寝間着を脱いで義勇の体に縋りついた。女の方は下から大人しく抜け出て中から零れ落ちて来るものを手拭いで拭きとり、待ってましたとばかりに義勇の唇に吸い付く自分を見つめていた。

「んっんっ、ぎゆ、さん、おれ、おれ」
「ああ、炭治郎」
「おれ、の、おれの、なのに」

口付けの合間に譫言のように呟く炭治郎に愛しさが沸き上がり敷布の上に倒す。むっくりと起き上がった魔羅を上下に扱き鈴口に爪を立ててやると、若さゆえか直ぐに絶頂に達する。「ああっ、」と叫ぶと同時に義勇の手が白濁に汚れ布巾で乱暴に拭った。

「お、おれだって、おれだって、」
「炭治郎?」

最早泣く寸前である。炭治郎はゆっくりと起き上がり義勇の方に尻を向けた。自らの指で縦に割れた穴を弄り入れてくれと懇願したのだ。義勇が風呂を済ませた後に炭治郎は一人風呂場でこの時の為の準備をしていた。
恋人の手を煩わせまいと指先が届く範囲を弄っていたのだった。

「おねがい、はやく、」
「いいのか・・・?」
「ん、はい」

言葉同様に尻の穴は飢えている様だ。くぱくぱと開閉し義勇の魔羅を欲しがっている。膝立ちになった義勇は炭治郎の尻たぶを掴み亀頭をぐりと押し当てる。そして先端がぬっぷりと入ったのを確認しゆっくりと挿入していった。
炭治郎は「あ゛あっ」と声を上げ顔を敷布に突っ伏した。尻だけを高く上げたままの状態だったが構わない。とにかく義勇に抱いて欲しかったのだ。

「んっんっ、」
「大事ないか・・・」
「あっ、いい、いいです」

女陰とは違った絶妙な肉壁が魔羅を包み込んでいる。炭治郎が息をするたびにきゅうと締め付けが始まり、今すぐにでも激しく腰を動かしたかった。

「おく、おく、」
「いいのか」
「はやく、はやく、もう、」
「分かった」

まだ幼い体に無体を強いることへの罪悪感はとっくに失っていた。
尻の穴をずりずりと動かす度に「ひぃひぃ」と声を上げて魔羅を締め付ける。

「ん゛ああっ」

いい所に当たったようだ。義勇はすでに勃ち上がっている炭治郎の陰茎に手を伸ばし掌でゆっくりと包む。腰を動かしながらそれを上下に扱き始めると「だめだめぇ」と叫び敷布を蹴った。

「はあっ、たん、じろう」
「あんっ、あ゛っ、おく、おくッ、あたってっ」

炭治郎は背後から激しく突かれながらも視線を周囲に彷徨わせた。先程抱かれながら女の炭治郎が笑ったように、笑い返してやるつもりだった。だがその姿は部屋のどこにもない。すると義勇の方が「コラ、よせっ」と誰かを叱責するような声が聞こえ炭治郎は顔を上げた。

「あっ、ちょ、ちょっと、」
「俺も混ぜて欲しいです、義勇さん」

義勇の背中にぴったりと体を貼り付ける炭治郎がいた。

「えへへ、義勇さん、口吸って」
「あっ、ぎゆ、さん!」

お願い通り義勇は後ろにいる炭治郎の口を吸った。
恋人を抱きながら、別の女に口付けるなんてと炭治郎は非難の目をやったが義勇は気付いていない。

「んぅ、んっ、んーっ」
「あっん、ぎゆ、さ、あ゛うっ、ん、んっ、ああーっ」

炭治郎と口付けしながらも腰の動きは激しくなる。炭治郎は敷布を強く掴みながら快楽に耐えたが躾された体は到底我慢できることは出来なかった。魔羅を扱かれ尻のしこりを亀頭で押され先に達したのは炭治郎だ、その締め付けに義勇は炭治郎の中で精を爆ぜた。
ぐったりと敷布の上で息を吐いていると背後から怪しい音が聞こえてきて炭治郎は体を起こした。

「あっ!」
「炭治郎、お前もやってくれ」

胡坐を掻いた義勇の股の間に炭治郎が顔を埋めている。華奢な背中にはいくつもの傷があり、それは自分の背中にある傷と一致する。ここまで一緒だとやはり気味が悪い。
炭治郎は義勇の魔羅を口内に含み奉仕を続けている。口淫はそれ程数をこなしたことは無いが、義勇が感じる所は分かっている。同じ男だからこそ分かるのだ。

「どけよ」
「んっ、やだ」
「俺がやる!」
「でも、一本しかないから順番な」

むむむ、と頬を膨らませて怒るのはいつも自分ばかりだ。
肝心の義勇は女の炭治郎の髪を撫で艶やかな背中に手を這わしている。

「んっんっ、」

じゅぷじゅぷと美味しそうな音を立てて口淫する様子に我慢できなくなった炭治郎は無理矢理引き剥がした。自分と同じ髪色の髪を引っ張ったことで非難の声が上がる。

「痛ッ、義勇さん!」
「待て。落ち着けっ、二人とも」
「義勇さんも贔屓しないでください!」
「してな、」
「してますよ!もう、俺がやりますから!」

すでに勃ち上がっている男根を口に含む。自分よりも遥かに立派なそれは口内に全てを入りきることは不可能だ。早くイカせてやろうと、炭治郎は亀頭を中心に攻めることにした。舌先で割れ目を弄り途中何度か口を窄めて吸い上げる。
すると脇から炭治郎が顔を出し、竿を舐め始めた。

「邪魔すんなって!」
「二人でした方が義勇さん喜ぶよ。ね?」

炭治郎がゆっくりと顔を上げると確かに義勇は顔を顰めながらも否定はしなかった。戸惑いと強い性欲の匂い。二人で交互に一本の竿を舐め続ける。女の炭治郎が亀頭を舐め、炭治郎が竿を扱く。果てしなく破廉恥な行為だったが異常に興奮した。
三人とも行為に夢中だった。

「炭治郎、」

二人が顔を上げる。

「いれたい」
「どっちに?」
「炭治郎に、だ」

敷布に寝転がったのは女の炭治郎、その上に炭治郎が手を付いた。
二人の背後には義勇がひどく熱に浮かされたような顔で見つめていた。目の前には穴が二つ。愛する恋人が、まるで双子のような存在が待ちわびているのだ。

「義勇さんの助平」
「うん、そうだね」

互いにそれは頷いた。

「ああ、何とでも言え」

この状況で貞淑もクソもない。まずは炭治郎の尻の穴に挿入した。すでに柔らかいそこはぬぷんと義勇の魔羅を受け入れてしまう。

「ああっ、アッ、」

崩れそうになった体を下の炭治郎が支える。「大丈夫?」という問いかけには残念ながら答えられそうにない。

「おしり、気持ちいい?」
「あぅ、ん゛っ、あっ、いい、いいよ」

尻たぶを持ち上げて赤く腫れた穴が艶めかしい。腰を持ち激しく出入りを繰り返すと先に達してしまったのは義勇の方だった。「あ、う、」と小さく呻き尻で受け止めた義勇の白濁の温かさに心地良ささえ覚えた。

「いれる、しますか、義勇さん」
「ああ・・・」
「わあ、元気ですね」

どこか他人事のように女の炭治郎は足を開いた。すでに崩れ落ちた炭治郎の体の下敷きになりながら器用に開き、義勇の魔羅を受け入れた。

「んあっ、」
「くぅ、」
「あんっ、おっき、あっ、ね、すごいね、」

上に乗ったままの炭治郎に尋ねる。

「くち、吸って、ぎゆ、さん」

強請られるまま炭治郎の口を吸い二人の間に挟まれた炭治郎は、はた、とそこで意識が戻った。同じ顔の女体がぴったりとくっつき後ろには義勇の熱い体に押し潰されそうだった。でも抱かれているのが自分でない事に気付き抜け出ようと試みる。

「くちを、吸え、ふたりで」
「えっ」
「えー」

もう、本当に助平ですね、と言ったのは女の方だった。
戸惑う炭治郎とは裏腹に同じ顔の炭治郎が恥ずかしげもなく迫って来る。そして「んむっ」と声を上げたのは炭治郎だ。
柔らかい唇、小さな舌、甘い唾液。それは全く自分と同じ造形物だ。

「んっ、うっん、あんっ、」
「ちょ、まっ、ん、んん、んーーっ」
「どっちが助平だ。炭治郎」

女の体をひたすら揺らしながら、義勇は炭治郎の萎えてしまった陰茎に手を伸ばす。あまりに滑稽な姿だ。男根を扱きながら女の陰を貫く自分の姿なんて鏡があっても見たくはない。だがそれが炭治郎であるならば、どちらも奉仕してやらねばと使命感が強かった。

「あっ、いく、いっちゃうッ!ぎゆ、さん!いやっ」
「おれ、おれもっ、やめっ」

先に気を遣ったのは男の炭治郎の方だった。鈴口をくりくりと弄ると耐え切れない声と共に畳の方まで射精し、続けて女の炭治郎も体を細かに痙攣させて震えていた。炭治郎がぐったりと女の体に倒れ込みころりと横に転がった。

「んっ、ねぇ、口すって」
「うん、いいよ」

意識が朦朧とする中で炭治郎たちはお互いに口を探り合いながら吸い始めた。ちゅうちゅうとまるで赤子が乳でも吸うような拙いものだ。だが義勇はその二人を見下ろしながらごくりと唾を飲み込んだ。

「ちゅ、んぅ、あっ、ひもちいい」
「うん、おれも、いい、いいよ」

義勇そっちのけで長い口付けが始まり、除け者扱いになったのは義勇の方だった。
互いに体を寄せ合って、炭治郎の手がそれぞれの体を撫でる。背中、腰、胸、尻、女と男の体の違いを確かめるような動きでもあった。

「たんじろう、」
「うん」
「きもちいいね、かわいいね」
「おまえも、かわいいよ」
「うん、ありがと」

炭治郎が炭治郎を抱き抱えながら眠りに入った。
それを見下ろしていた義勇はしばらく二人を眺めたあと、さてどうしたものかと悩んだ。今直ぐにでも寝入りたいのは山々だがこの惨状をほったらかしにすると明日が恐ろしい。重たい腰を上げて寝間着を羽織る。
二人に布団を掛けてやり、布巾と水を持って来ようとその場を立った。






―・・・愛されたい、愛されたい。あの人に愛されたかった。悲しい。そう願っただけなのに、アノヒトって誰だっけ。

あの女鬼の顔がこちらを向いた。
血走った目、土気色の肌。それが徐々に人の肌色に戻っていく。

―・・・羨ましい。あなたは愛されてる。かわいいあなた。私が愛してあげたかった。あなたはよく似てる。
―・・・大丈夫、ですか。ここから帰れますか。
―・・・大丈夫よ。もう大丈夫。最期にいいコト出来たから。あなたに会えてよかった。かわいいわ、かわいいわ、坊や。
―・・・なら、良いのですけど。迷わず行けますか。

女性は立ち上がって眩しい光の方へ歩いていく。
誰かが手を振っている。「気を付けて、次に生まれ変わる時は鬼になんてなっちゃダメですよ」そう声を掛けたのは紛れもない自分の声だ。
女性はもう一度炭治郎に深く頭を下げて光の方へ歩いて行った。



「―・・・っ」

光が差し込んでいる。
炭治郎は目を細めそちらを見ると障子の隙間から日差しが入り込んでいた。

「起きたか。もう昼だぞ」
「あ、・・・・」

枕元に水を置いていたのは義勇だった。濡らした手拭いも置いてあり、手を伸ばすと自分の額の上に同じようなものが乗っかっていた。

「あれから二日寝続けたぞ」
「え」
「俺のせいかと・・・」
「そんな、」

二日前の晩。激しい熱情に犯されたこと思い出したのだ。義勇がほんの僅かな時間、席を立ち部屋に戻ると寝所に転がっていたのは炭治郎だけだった。鼻を掠めた煤臭い匂いは鬼を退治した時に残るものと一緒だった。
あれはやはり鬼だったのか。だが炭治郎と同じ顔をした鬼を斬る勇気はこの時は持ち合わせていなかった。

炭治郎は思い出す。
もう一人の女の自分。同じなようで同じじゃない。

「誰かに、愛されたかったんですかね・・・」
「?」
「もう少しやさしくすればかよかったな」

しかし光の方へ歩いていく彼女の顔はもう思い出せない。




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