いちまんヒットフリーおきば | ナノ

ズミガン


・二者択一

「ガンピさん、事は簡単です。二択です、この書類にサインをするか、私に毟られるかどちらかを選んで下さい」
「どちらも選べぬ!!」

ジリジリ、ジリジリと距離を詰めようとするズミと、距離を開けようとするガンピの間に今大きな緊張が走っている。

「何故我を毟ろうとなさるのか、そもそも我の何を毟るのかその紙はなんなのか、聞きたい事は山程あるのである!」
実際は山程ない、寧ろ話を聞くより逃げたい。この本気一直線の同僚から今直ぐ逃げ出したいが背を向けたら最後の気もして、逃げるに逃げ出せない…

「ならばお答えしましょう、この紙は公的な書類です。簡単に言えば契約書です」
「サラ金であるか!?わ、我のハラワタを担保にいくら借りるおつもりか!」
「そんなあくどい物では有りません!私と貴方との契約書です!そもそも金なんか余ってますよ」
うわ、言ったよ。金余ってる、確かに爵位デュークだし四天王にもなれば給金はかなり跳ね上がるしそもそもズミ殿は元伝説のシェフ。金子が無い訳がない。ならば、何を契約させるきだこの御仁
「わ、我とそなたの?」
「終身雇用契約書類です、所謂―婚姻届ですね」
はいい?
「何故我がズミ殿と婚姻するの?なにゆえ終身雇用の先がズミ殿なの??」
「貴方の老後までしっかりケアしますのでご安心なさい」
「その様な心配はしておらぬ、まだそんな歳じゃないもん我!」
「私から見れば立派なおじさんです、しかも一人身で広い邸に独りで住まう淋しい老後設計済みでしょうに」
「我の人生を勝手に想像しないで欲しいのである!」
「未来と言って下さい、ご結婚の意思も希望も無いとお伺いしました。しかし、何度も貴方に告げているので貴方もご存知でしょうが私は貴方と婚姻関係を結びたいのです、簡単に言えば貴方と結婚したいと何度も貴方に―」
「その話なら丁重にお断りしたではないか!誠心誠意、真心を込めて贈り物込みで」
因みに贈り物はあのズミ殿すら手に入れられなかったワインだ。よかった、なまじ古い家系で本当に良かった。それで終わったと思っていた話をまだ燻らせていたとは、ズミ殿しつこい、本当にしつこい!
等と気をそらしていればそんなガンピに気の緩み等与えないと言わんばかりにズミは次の手を打ってくる。

「ならば二択目の選択をお望みですか?」
「二択目…む、毟るとは一体」
その手元の包丁とナイフ何であるか?なんでそんな嬉しそうな顔をなさるのだズミ殿?ね、ちょっとズミ殿見たことの無い笑顔で何を我に言う気なのだ??

「全てです」

「貴方のその鎧を海老の殻の様に毟り、その下の衣服を剥ぎ取り、貴方の心の牙城や盾となるもの全てを私の全てを以って剥ぎ、削ぎ、削り落とします」
そして
「既成事実を拵えて貴方を迎えようかと」
う、わ…犯罪だ。この男犯罪者予備軍である、同僚を、まだ先のある若者をその様な道に走らせる訳には行かない。そう我の正義の心は燃えるが、いざズミ殿を止めよと言われるとその正義の心は水をかけられ萎み、灯火消えうせそうである。返答する声もつい上擦ってしまうと言うものだ。
「そ、そんな男気発揮せずともよい!」
「矢張り毟ってからの方がサインはいただきやすいようですね」
聞いてない、相変わらず人の話聞かないこの青年!

さあガンピさん、
「ズミが誠心誠意、丹精と真心を込めて料理して差し上げます」

だからお選びなさい。

「どちらのコースをご所望ですか?」

どちらも選べぬ、と言っておるのに是も非も無いのかこの男は。
逃げたい、逃げねば。でも背を向けたら最後だお仕舞いだ、予感ではない、これは未来予知だ。背を向けた瞬間、この男は二つ目の選択肢を取り強行する。ああ、怖ろしや怖ろしや…

選ばねば逃げられぬのか?はいorYESの逃げ道の無い選択を。





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