没の部屋 | ナノ

気付かないほうが悪い(ズミ+ガンピ♀)


タイトルの通り女体化でかつ、ガンピさんはバツイチです。
それでも大丈夫と言う方はどうぞスクロールなさって下さい!!








































男にしては微妙に小さい人だな、と何となく思っていた。

周りが女性ばかりの職場環境なので、彼女達に聞いても自分よりは大きいし個人差じゃないかと言われて、確かにそうなのだが妙に引っ掛かるものがある。

男の割りに奇妙に細く、細やかな部分があるのだ。
じろじろ見たわけではない、多分此れは勘だ。私は自分の勘を蔑ろにする人間ではない、寧ろ信じている。
しかしその勘を裏づけする証拠がない。本人に聞けば一番確実なのだが、果たしてなんと尋ねろと言うのか…全く皆目検討も付かない。

そんな果て度無い事を考えていた所為か、ズミは通路の角から此方へ歩いてくる特徴的な足音を何故か聞き逃してしまった。

「―ぅわ!危ない!!」
「っ!」
その叫び声がズミの耳に届いた時は既に遅く、向こうがブレーキをかけてもズミが間に合わず曲がってきた相手とズミは衝突し互いに床に倒れこんだ。
瞬間、後頭部に結構な痛みが走り反射的につぶった目蓋を開けばリーグの天井が映る。そして骨盤の辺りがずどん、と重い。何か乗っている、のか…
と視線を下げると自分の下腹部に腰を下ろしている同僚の姿が目の中いっぱいに映って来た。重たいのは当たり前だった、ぶつかって自分に乗っかってしまった同僚―ガンピさんは全身を重たい甲冑で覆う騎士なのだ。そんなのが乗っかったら重たいに決まってる。

「ぬお!済まぬズミ殿、我が避けきれずこのような事になってしまって」
「いえ…こちらこそ少し考え事をしていて………?」

なんだ、この人の脚の感触は?

太腿が、否触れられる生身は内腿だけだが、柔らかい。

筋肉は着いている、寧ろしっかりしているのは確かだ。しかし自分の脚を触って知ってる、男の脚としては筋の張り具合が全く違う。この人どんな鍛え方をしてるんだ?
不意に触れた脚の考察をしていると上から戸惑いがちな声が私を呼ぶ。
「ズ…ズミ殿、手が」
「申し訳ありませんがその儘で」
「へ?」
「貴方の鎧にエプロンが引っ掛かりました。外しますのでその格好のままで」
「そっ其方を跨いだ儘待てと言うのか!?」
「エプロンのボタンを外したいのはやまやまですが、微妙に届かない位置で貴方の鎧に引っ掛かりました。ですのでその儘の体制の維持をお願いします」
「なんと!で、では我が甲冑を外す故暫し待たれ―」
「私のエプロンを外した方が手間がありません、なので其の儘で」
「ず…ズミ殿ぉ〜」
何故泣きそうな声を上げるのか、別にお互い特殊な性癖を持っている訳であるまいに。男同士、しかも事故で跨ぎ跨がれているだけだ、何の戸惑いもなく要素も感じられない。ガンピの表情変化の理由が解らない儘、ズミは取り合えずエプロンを外そうと手を動かした。
体勢が体勢だけに大分動きが制限されるし妙な角度で挟まったのか、エプロンが抜ける気が全くしない。もちゃくちゃしている内に時間は経ち、何とか僅かずつエプロンは抜けてきたが中腰に半端な角度で、ガンピにも負担が掛かっているのだろう。ふらふらと揺らぎ、ズミを跨いでいる太腿は閉じてしまいそうになっている。
「もう少し頑張って脚を開いていてください」
そう言いながらズミがガンピの内腿を掴むと
「っゃ、ズミ殿!」
なんて悲鳴を上げられた、おいおい、大の男が何て声出してるんだ…?奇妙に高い声だったな、しかし、この人の太腿本当に柔らかいな。筋肉の質が違うんだろうか?
等と調理する肉の部位のような例えを頭の中に描きながらエプロンを外す事に再度集中し始めた時、廊下の向こうから
「あれ、ズミ君とガンピさんなにしてるの?」
と聞き馴染んだ声が聞こえ顔を上げればそれは上司であるカルネだった。
「か、カルネ殿!」
「カルネさん、今し方ガンピさんとぶつかって、私のエプロンが引っ掛かったところです」
「そうなの?でもなんでズミ君の上にガンピさんが乗っかってるの?」
「ぶつかって転んでしまったのだ…カルネ殿、な、なんとかしていただけぬか?こ、この様な格好耐えられぬ!」
「何を耐えるんです、もう少しですのでその儘でいて下さい」
「だからズミ殿!」
何何ださっきからこの人は、しかも何で顔真っ赤にして涙目なんだ?全く理解出来ない…
「ズミ君、ちょっと冗談が過ぎない?」
「冗談ですか?別に男性に跨がれても私は何とも思いませんが?ね?ガンピさん」
「ず、ズミ殿、だから我は」
もう、ズミ君冗談でもなんて事言うの!と怒りを滲ませた声の後、カルネ言われた一言が、ズミの心を思いっきり突き刺した。

「ズミ君!ガンピさんは女の人よ!!」

…………なんと?



それから五分程経ったか、恙無くエプロンを外した後とても居心地の悪い空気の中ズミは床に項垂れていた。
「一応喋ったつもりだったけど、聞こえて無かったかな〜」
「多分…上の空だったかと」
「料理の事ばっかり考えてたんでしょ?も〜大事な話はちゃんと聞かなきゃ」
「…返す言葉もございません」
彼は彼でなく、彼女だったのか…しかも深い仲ではない女性の太腿や内股を思いっきり撫で擦ったと……どんなスケベだ私は。スキンシップ通り越してセクハラだ、訴えられたら即行で負ける。
なんて情けない、なんて…ああ、今とても
「猛烈に死にたいです…」
「そ、そう気を落とさずにズミ殿、はっきり言わなかった我も悪いのだし」
「レディと知らずとは言え、男がして良い事と悪い事があります、」
「れ、もうレディなんて歳ではない、だから気になさるな。若い内は間違いを犯す事も多々ある」
「間違えて良い事と悪い事もあると思いますが?」
「細かい、そなた細かいぞ…」
気にしてないから。で済ませてくれればいいのに、この真面目な青年はソレでは駄目だと言う。ならば今度食事にでも誘ってくれと言ってもその程度では贖罪にならないとまで言う。妥協と言う言葉を知らんのか
じゃ、後は二人で話し合ってね、と場を後にしたカルネ殿を少し怨みたい。もう少し居てくれたっていいじゃないか、今非常に居た堪れなく重苦しい空気なのに!
この場に居ない上司に恨み言を垂れたい気持ちがガンピの胸中いっぱいに広がっているが最早どうにもならない。上司はいないし、生真面目な同僚はショックが大きかったのか未だに立ち上がろうとしない。
この状況を如何して収めろとおっしゃるのだ?カルネ殿??
等など、ガンピも脳内を懊悩で埋め尽くされ、混乱の極みに至りそうになってまた更に時間が経ち、混乱していても何も解決はしない、とガンピがまともな思考を取り戻した頃、漸くズミも立ち上がりやおら顔を上げ他と思いきや
「……責任を取ると言う言葉と行為がカントーの方にありますがご存知ですか?」
とガンピに唐突に尋ねた。
「ズミ殿?」
一体何を…と尋ねようとした時、突然ズミはガンピに歩み寄るとガンピの両手を握り締め至極真剣な表情で

「結婚しましょう、ガンピさん」
等と宣ったではないか!この発言に落ち着きを取り戻しつつあったガンピの胸中はまた大荒れ模様になった。

「ズミ殿落ち着いて!ズミ殿ご乱心、ご乱心である!!」
「私は常に本気です!女性にこのような辱めを行っておいてその責任を取らない痴れ者ではありません!!」
「そもそも我フル装備であるし、外見ではほぼ解らぬから。わ、我は気にしてはおらぬ!な?」
「……女性が気にしていないと言うのは場を考えての発言の場合が多いと聞いた事があります。ご遠慮なさらずに、傷付けた償いをしますので」
「いや傷付いてないから」
「…なかなか強情ですね」
「貴殿程で…ぅひっ?!」
するっと、風のような冷たい何かが首元を掠めそれに驚いて首を竦めたガンピにズミは平坦に言い放つ。
「首のサイズ、指のサイズは確認しました」
「は?!」
「ネックレスと指輪、どちらがお好きですか?」
「なんと??」
「貴方ならどちらでも似合いますよ」
「さり気になんと言う事を!からかうのも大概になされよ!!」
「私は本気です、と先程から何度も言っています!」
「責任等と言われて結婚せよと言われても困るし、貴殿も困るであろう?こんな年上のおばさんに一時の感情に任せ結婚を申し込む等してはならぬ!もっと己に見合い、己を支え高め合える相手は吟味してしかるべきである!」
「それでは私のセクハラ行為を私に無かった事にしろと言うのですか?馬鹿にしないで下さい!己の責任くらい取れる大人です!そしてその責任の取り方は私自身が決めるべき事であり、その行動や言動に後悔をした事は唯の一度もありません!!」
だから!それが浅慮と言うのだ!と床に叩きつけるように言い放ったガンピは勢い任せに続けてこう言った。

「あーもう!我はバツイチ故、初婚であろう貴殿に見合う相手ではない!!」

この瞬間ズミは今度こそ死のうと思った。





悪ふざけが過ぎたかと一瞬思いましたが、後悔はしていません。
淑女なガンピおばさんを書きたかったんです…
そして男だと思い込んでセクハラするズミさんも書きたかったんです。


14/10/13





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