没の部屋 | ナノ

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「あなたと食事」

・ズミ→ガン+ザクロ

早朝のカロス、ミアレシティ。広く、長く張り巡らされた通路をランニング―基い何かから逃げるように猛然と走り抜ける男性二人。漫画みたいに土煙立てながら走ってるあたり、二人の焦りと背後への恐怖がもし第三者が見ていたらありありと伝わっただろうが残念な事に第三者は居ない。

その土煙を上げ逃げている男の一人はショウヨウシティジムリーダー・ザクロでもう一人はチャンピオンリーグ四天王の一人、ガンピだった。漫画のように土煙を立てながら走ってるあたり二人の脚力の恐ろしさが解ると言うか、今日のミアレシティが砂っぽいと言うべきか…
しかし、二人を其処までさせるのは10m程後方から同じく土煙を上げて追いかけてくる四天王の一人ズミの存在の所為だった。件のズミは何故か片腕にバスケットを提げ猛然と迫ってきている。
そして馬鹿でかい声で二人にこう告げた。

「ちゃんと食べろと私は、言ってるの、ですよ!」
もう何回言ってるんだこの台詞、大概はザクロ一人に言えば済んでいたのに何故今日に限ってもう一人に言わなければならないんだ。

「無理です」
「駄目である!」
しかもなんだこの結束力は、忌々しい。腹立ち混じりに
「理由を述べなさい!私を納得させる理由を!」
等と叫べば私の問いに二人はまた仲良く

「今私達は」
「減量中である!」
と全く同じタイミングで言い放った。何か腹立つ!し、納得がいかない。

「お前等の何処に絞る贅肉がある!!」
ザクロは仕事柄常に減量しているようなものだし、ガンピは職業が「騎士」らしいし全身を鋼鉄の甲冑で包まれているので体型維持は必須だ。甲冑は伸び縮みしないだろうし

「三日前の朝、僅かにズボンのベルトがきつくなってました」
「三日前の朝、ほんの僅かだが甲冑のベルトがきつかったのである」

………何だその全く以って些細過ぎる言い訳は!

「僅かなら少し運動量を増やせばいいだけでしょう!」
「ズミ殿!加齢を甘く見てはならぬ!言いたくはないし認めたくは無いが現に我にも衰えの翳しが…」
「その気の緩みがボルダリングに影響するのです、徹底的にやらなければ!」
な?ね?と顔を合わせ相槌を打ち合う二人の息の合いっぷりに、お前等何時の間に仲良くなってんだおい鋼馬鹿!浮気ですか言い度胸し腐ってやがるじゃねーですかこの野郎!…私はどうにも混乱してきているようだ。落ち着かなければ……

「しかし貴方方が朝食を拒否する理由にはなりませんよ!バランスのよい食事と適度な運動、健全な生活リズムがダイエットには不可欠。その内食事と言う重大要因をはしょっては望む結果など出ませんよ!!」
「ちゃんと食べましたので平気です、」
「我もちゃんと食べたである」
「何を食べた何を!」
「野菜ジュースとプロテインと酵素パウダーを混ぜたもの飲みました」
「美味しかったである!」
朝飯も同じもの食べてんのかよお前等!!
「ジュースバーで顔を合わせまして」
「ミアレに新しく出来たのである!汁屋と違い人間専用であったが、落ち着いた内装と早朝から空いているので今話題の店だと、セレナ殿にこの前伺ったのだ!」

ブチッ

「貴様等!食事を疎かにするなぁあーーー!」

「わーズミ殿が包丁投げてきたー!!」
「逃げますよガンピさん!ああなったズミさんは止められませんから」
「ズミ殿、落ち着いて!お昼ご飯はちゃんと食べるから!!少なめだけど」
「そうですよズミさん、食べますよ!少な目だけれど」
「ちゃんと喰えちゃんとぉおおおおおおー、この甲冑馬鹿がぁあ!人の食事放り出して何イチャコラしとんじゃワレぇえーーーーー!」

・ギマレン

『ギーマへ』
レンブを使って俺を召喚とは、シキミも考えたものだ。だけどね、君のなにやらに付き合わされる程俺は暇じゃ
『シキミがお前を呼び出せと言うがどう言う訳か、よく解らないので俺はお前の動向へ指示も強要もしない』
『だが、苺とルバーブのパイを作ったから速めに帰ってきてくれると有り難い』
『シキミ達からお前の分を護るのはなかなか大変だから』

またか!また俺の彼女の手作りスイーツやメシを奪いに来たのかあの娘どもは!!

「もしもしレンブ?」
『ギーマ?調度好い、お前から何とか言ってくれないか?シキミとカトレアとアイリスがお前の分まで食べてしまいそうなんだ』
「アイリス迄つれてきたの!?」
『何故だか着いてきたそうだ、仕事を放棄したのかとさっき小一時間程床に座らせて説教したんだが』
「ナイスだ、まさにGJだよレンブ。其の儘勢いでつまみ出しちゃって」
『ギーマ、晩飯は何がいい?肉?魚?パスタとか野菜で簡単にすますか?それともホットサンドとか』
「やめてレンブ!魅惑の単語を放ち続けるのやめて!背後の娘達が目を輝かせて居座っちゃうだろ!?」
君達私とレンブの愛の巣に何しに来るの?邪魔?邪魔だよね?邪魔しにきてるんでしょ?その為に可愛くあどけないアイリスを誑かしてるんだよね?何て酷い大人たちだ君達は!もう許せん、
帰ったらたっぷりお仕置きしてお土産持たせて追い出しいてやる。

・デンオ

俺はオーバ、シンオウリーグ四天王であり決して家政婦ではない。
それなのに何故か、幼馴染であり腐れ縁でありシンオウジムリーダー最強であるデンジの世話を何年もし続けている。
そう、今ソファーに力なく横たわっているこの男の世話を甲斐甲斐しく!!
「…オーバ」
「なんだよ」
「俺はラ●のより●麺の冷やし中華の方が美味いと思」
「お前またインスタント麺で暮らしてたのかよ!」
「違ぇよ」
「麺類ばっか喰ってたんだよ」
「相変わらずの片食いやめろよなお前さ〜」
「俺そこいらのラーメン通に勝つ自信出来たわ〜」
「拉麺がメインだったんだなデンジ、拉麺が5〜6割の食生活だったんだなデンジ!」
料理は出来る筈なのに、家事はそれなりにこなせる筈なのに、なんでこうなんだデンジ!?
なんて何度目か解らない溜息混じりの問答は脇に置いておいて、今はこの栄養失調でひっくり返った馬鹿に何かを食べさせなければ

「何が喰いたい?」
「拉麺と饂飩と蕎麦と素麺と冷やし中華と焼きそばと、ベトナム麺と冷麺とパスタとカップ麺と袋麺と冷凍麺とこんにゃく麺と豆腐麺以外だったらなんでもいい」
「つまり麺類以外なんだなデンジ!麺以外食べてなかったんだなデンジ!?」
「だって設計図、後ちょっとだったんだぜ?それでさ、その設計図引いてたときに別のアイデアが浮かんで」
「飯を食うのを忘れて、寝るのも忘れたんだな、そうなんだなデンジ?!」
「んー、そんな感じ?かな?」
ああ、どうしてこうなのかこいつは。嘆いても仕方ないって思ったばっかなのに!……落ち着けオーバ、デンジの通常運行だ。呆れても良いが諦めたらそこで終わりだ、取り敢えず何か気を惹く食べ物をデンジの前に差し出すんだ。そう例えば―
「ロコンのおいなりさん、もらったんだけどお前も食うか?」
「めっちゃ喰いたい」
有り難うこの手土産をくれたトレーナー!
お陰でここのメカ馬鹿が飢え死にせずに済んだ、本当に有り難う!!
そんな意図でこの土産をくれた訳じゃないトレーナーに頭の中で感謝を連呼しながら、まずつかみはオッケーだとオーバは胸を撫で下ろすと同時に、学習してくれないかなーとまた溜息を吐いた。












何だか語感と流れが悪くてあげられなかったもの。





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