小説 | ナノ





夕日の欠片(ギーマ+アセロラ)






着物のおじさん、ギーマさんはいつも浜辺に立っている。
何をしているのか解らないけれどアローラの燦々と降り注ぐ陽射しの下、木陰にも入らず唯立っている。見かける度あの人は浜辺に立って海を遠くを見つめてる、あんなにって程陽射しにあてられているのにギーマさんは日焼けの一つもしない、あたしもあんまり日焼けしないけどギーマおじさんもなのかな?
今日もまた浜辺にギーマさんはいた、でも立ってなくてしゃがんで砂浜で何かをしていた。背中しか見えないから何してるかわからなくてあたしも暇だったから何してるの?って声をかけたら振り返ったギーマさんは見上げながら何時ものよくわかんない笑い顔で力の無い声で、探し物をしてるんだよって言った。
「何を探してるのー?」
「指輪だよ、金色の指輪」
そう言いながらまたしゃがんで砂浜をかき回し始めたギーマさんの隣で手伝ってあげるーと砂をかき回しはじめたあたしに珍しくギーマさんは聞いてないことを話しだした。声をかけてもこのおじさんは聞いたこと以上はほとんど教えてくれないからとっても珍しいなーって思いながら想像の金色の指輪を目指して宝探しを続ける。
「大事な人とお揃いの指輪なんだ、大切に持っていたのにさっきうっかり落としてしまった」
ライドポケモン呼べばいいのにーと思ったけどおじさんはサメハダーの番号しか知らないっていつだか言ってたから自分で探してるんだろうなってアセロラわかったから聞くのやめて新しい穴をほりはじめた。
ちょっとほってるうちにヨウとハウが通りかかって、いつの間にか四人で砂浜で宝探しになってたのアセロラ楽しかったなー。
「ギーマさんどんな指輪なのー?」
ハウが聞くとおじさんは普通のだよ、普通の金色の何の飾りもない指輪だよって言いながら砂を真剣にかき回してる、すごく大切なんだろうなって考えた後ひらめいて穴をほりながらおじさんに近づいて
「おそろいってー結婚指輪?」
なんて興味津々で聞いたら一瞬きょとんとした後ギーマおじさんは何時もより困った顔をして笑って
「それでも良かったかもしれない」
なんて言いはじめた、よくわかんないって思ったのが顔に出たのか更に言葉を続けた。
「そのつもりもあって用意したんだけどあの時はなんだか言えなくてね、あの人が今も持ってるのかは解らないけれど私は持っていたいんだ」
「フラれたの?」
「……どうかな、そう言えば告白した時も面と向かって返事はもらえなかったな。恥ずかしがりだったし」
「あはは、ギーマさんモテそうだもん相手の人も緊張してたんじゃないの?」
「緊張……あの頃はそうだったかもね今は、屹度呆れているだろうさ」
何時もと同じように笑うおじさんはそれでも何時もより楽しそうなような何時もよりつらそうなようなー、うーん何時もより考えてることが顔に出てるっていうかよくわかんない。砂の中からは色んなアイテムは出てくるのに金色の指輪は出てこない、レアアイテムなのかな?金の王冠みたいなのだきっと。
それから暫くみんなで探したんだけど指輪は出てこなくておじさんがぽつり、と限界だなって言って立ち上がってあたしを呼んだの。
「アセロラおいで、これ以上やると熱中症になってしまうよ、君達もおいで。何か飲みにいこう」
「でもまだ見つかってないよ?」
また後で探すよ、大事なものだって口にするのにおじさんはあたし達を立たせて浜辺を後にしてしまう。気になって仕方ないけど確かに今日は何時もよりうんと熱くて晴れてるし、帽子がないとくらくらしてしまう程に太陽は照り付けてくる。
あついねー、あっライドポケモン呼べばよかったねギーマさん後で呼んであげるー。
ハウがのんびりと口にしたら、そうだね明日でも頼もうかな?なんておじさんは本気か冗談か解らない事を言いながら四人でおやつを食べに街へ向かってその日は終わり。それからハウスにかえって夜ベッドに潜り込んだとき指輪の事を思い出したけれどあたしすっごく眠くてしかたなかったから明日朝早くでも行ってあげようかなって考えたあたりで眠ってしまった。
でもそんな事考えてた次の日は天気がすごく悪かった、風は強いし雨もひどくてハウやヨウと会ったけど浜辺に行くのは危険だから止めなさいって近所の人やポケモンセンターの人に止められて結局行けなくてやっと天気が落ち着いたのは夕方、三人で浜辺に向かったらギーマおじさんはいつも通りまたぼんやりと立ってた。砂と泥で汚れた着物をふわふわと風になびかせながら遠くを眺めていたおじさんの手のところにキラキラと夕陽が反射して金色に光ってるものが見えて、なんとなくそれは指輪だと思ったあたしは見つかったんだねって声をかけながらおじさんのところに駆け寄っていく。
近付くほどにおじさんの手の中のキラキラが強くなってピカピカになってまるで流れ星を捕まえたみたいに、手に太陽の欠片を持ってるみたいに見えてそれがすごくきれいに見えたの。あの指輪は本当におじさんの宝物だったんだ、だっておじさん着物も手も砂だらけだったし顔は夕日が眩しくてよく見えなかったけどおじさんの青く高い青空みたいな目は笑ってた、よく見る変な顔じゃない本当にうれしそうで安心したみたいな青色はとてもきれいで優しかった。





18/2/9