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ヒースとコゴミの話A(ヒース+コゴミ)






「降りなさい」
「えー、なんでなんで?この前はいいって言ったじゃん」
「そんな行儀の悪い子は駄目です、降りて隣に座りなさい」
「だってヒース、くっつくとあったかいんだもん今日寒いの」
「ならコート着てきなさい、この前一緒に買いに行っただろ?」
「ヒースにくっついてるのがいい、駄目?」
上目遣いに見上げるとか何処で覚えたのこの子は!あーもー嫌だ早く降りて私も男ですから!

【お膝の天使】



「おおー高〜い」
「……コゴミさん何故突然肩車をしろと?」
色々と此方にも都合があるんだよ、太股が顔に当たるとか頭に胸が掠めそうとかコゴミの腹筋はカチカチだとかでもそれもいいなとか意識したら私が大変な事になっちゃうとか!
「え?重い?じゃあダツラにでも頼」
「お安い御用だよコゴミ!私に任せなさい!」
かと言ってこの状況を誰かに譲る事もしたくない、うん、我ながらなんて利己的なんだろう。ファンの皆すまない、君達のドームスーパースターも一人の人間なんだ本当ごめん。
しかし突然の申し出だった、いきなりおんぶして肩車でもいいからやって!とせがまれ勢いでやったが後から後から疑問と罪悪感がじゃぶじゃぶ湧き上がる。しかし彼女にはそんなの微塵もないのだろう、時折伸び上がりながらも見える景色を楽しむ様に歓声を上げるばかりだ。

「ヒースはこう言う世界を見てるのか、いいなあ果てまでも見えそう」
あたしももっと大きくなりたかったな、ほろりと転がり出た本音らしきものになんとなく行動の意図を掴みながら同じ方を見やる。遠いな、理想も現実も欲しいものも全てが彼方にあるものばかりだ。
「……まだまだ見えないものばかりだよコゴミ」
「そうなの?」
「背が高くても見えない場所も沢山あるし霞んでる所もある」
「!?……うん」
「もっと進まなくてはね、目に写るところに辿り着く迄」
「うん」
「ほらそろそろ降りなさい」
「えー、ヒースダッシュ!走ってよヒース!」
「子供かよ!」
「子供でもいいからヒースダーッシュ!」
「ああもう」
見られても知らないからな。
支える腕に力を入れると頭を抱え込む様にコゴミも密着してくる。ああもう、なんだって君は無防備なんだでもこのまま見えない遥か彼方に共に向かうのも屹度素敵な事だろうなねえコゴミ?
果ての景色はどんなものだろうね

【天下眺望】