小説 | ナノ





お題短文詰め






「意外だね、平気だなんて」
「……そう見えているのなら、それでいい」
「は?何哲学?今授業や講釈を聞く場面に見えるかい?」
誰にも見える訳ない、そうだやっと掴んだチャンスでやってやった。何時も的外れな事を反応をしてくれる君を否が応にも舞台に引き上げてやったのにまたしても君はつれないか理解してないのかい?
ああ嘆かわしい
君の理解のなさではない、君と言う男一人の意識を思考をまともに自分に向けられない己の魅力の無さが嘆かわしく非常に腹立たしい。こんなに無力な男であったのか私は、なんて事だ!井の中の蛙であったと言うのかこのギーマは!
「もう一回してやろうか?」
腹立ち紛れの嫌がらせに襟を更に力を込めて握ると止めろと拒絶の意を示される、ああ今更解ったかこの鈍感めもう少し早く顔を赤くするなり青くするなり怒るなり怒鳴るなりすればよかったんだよ君は。なあ!レン
「今俺はとても混乱している、だから止めろ」
「はあ?」
「お前が俺に……有り得ない」
「はああ?」
「お前が俺にキスするなんて…………夢よりひどい」
すとん、と腰が抜けたように床に落ちるレンブの動きの儘私もつんのめり床に落ちていく、唐突な挙動に反応が遅れ怪我するだろうがと脅してやろうかと俯いた顔を覗き込んだらなんとまあ、いい反応してるじゃないか君!今更その大きな手で顔を隠したって無駄だよ私の愛しい人、もう見て知ってしまったから私の勝ちだ。平気じゃないと解りきった君の気持ちなんてとても単純明快なんだろ?

「なんだ、意外だ。君も私と同じ気持ちだったなんて!」

【君を愛してる!】



お題、恋しい背中(ギマレン)
見上げる背は広く逞しい。それこそ私が隠れてしまう程に広く鍛えられたそれは力強い、何者にも脅かされないと屈しないと倒れないと言わんばかりの背は誰もが安心感を信頼を抱くに値する、男らしさの塊だ。

でも、ああ知ってるよレンブ

その背中が丸く小さくなる事がある事を
誰にも見せず部屋の片隅でベッドの上でソファーの上で、誰もいないリーグで街の外れで人気のない公園のベンチで。
堪える様に唯唯静かに背中を丸める君がいじましく愛おしい、回りきらない腕を回せば何やら色々口にするけどどれもこれも可愛いものさ気になんてなりやしない。
背中に頬をつければじわじわと滲む体温としっかりした鼓動が益々愛しくて心では包み込むつもりで更に腕を回すけど現実は回らない程大きな体が感触が今、恋しく思い止まない。速く仕事が終わればいいのに、そしたらまた何時もは見上げるばかりの背を見下ろして腕の中に閉じ込めて愛してあげたいよ私の愛しい人。
目蓋の裏の君と背中と暖かさが恋しいね淋しいよダーリン、なんてソファーにふんぞり返りながら今日もギーマは偶さかにしか訪れぬ挑戦者を待ち続けた。

【恋し乞いしと希う】



「もし私が遠くにいくなら君を拐って行くのにな」
狡いね君は、何も言わないで一人でいなくなるんだもの。
言葉は虚しく、主を失った静かな部屋に溶け消えていく。君以外に誰がここを守り挑戦者を迎え入れられるのかくらい考え付くくせに、本当によく似た師弟だよ君達は
減らず口も皮肉も虚空に投げつけられるだけだが、言わずにはいられなかった。

ギマレン【その背には届かない】