「マツバ、今夜は寝かせない、ぜ！」

なんて、風呂上りのほっこりしたいい気分で手持ちのポケモンをタオルで拭いてあげている時に、障子を壊れんばかりの勢いで開け放って何と言う事をかましてくれるんだい君。
「ミナキ君、僕のポケモンの情操教育に悪いから卑猥な発言を大きな声で堂々と言うの止めてくれる？」
「卑猥じゃない！堂々と夜のお誘いをしてるんだぜ私は」
な？なんて言いながらミナキ君は僕のヤミラミの背中や腕を自分の頭に乗せていたタオルで拭いてくれている。いいんだ、ゴーストポケモンと風呂に入ってなんか悪いか、僕とミナキ君は一緒に入るぞ！時々涼しい事この上ないけれど。
なんて意識を明後日に向けている場合じゃない、何時もなら右から左に受け流すけど今日は何だかミナキ君は興奮しているようだ。放っておいたら僕は本当に今夜は眠れないかもしれない…主に騒音で。

「マツバ！最近私達ご無沙汰じゃないか！」
「なにそのやっすいAVみたいな台詞」
「お前やっすいAV見たのか!?一人で見たのか！なんだよ私を呼べよ!!一緒に見るのに！」
「え？何ミナキ君そんな趣味が…」
「膝と座布団抱えて恋人とAV鑑賞はお決まりだろう！」
否、世間の誰もそんなの決めてないよ、と興味もなさ気に言い放ちポケモン達を寝かしつけるとぷんぷん、と擬音が付きそうな感じで怒っているミナキ君に疾風の様に近付くとお決まりのチョークスリーパーを掛けながらの足払いで、ミナキ君お尻からを床に叩き付けた。ぎゃんっなんて聞こえるけどあーあー、聞〜こえないなー
「チョークは反則だぞマツバあー！」
お決まりと言うだけあって随分慣れて来てしまっているミナキ君は僕がロックを決める刹那に腕を差し入れてきていた為完璧には決まっていない。なんだ、随分と慣れてきたじゃない君。
「あのね、なんでそんないきなり大きな声で言い始めるの君、情緒ってもんが君には無いの？ね？」
決まらないならと決め手を変えようと動けばミナキ君も関節や首を決められては堪らないと、負けじと防御してくる。しながらも「情緒はあるが醸してる内にお前が寝たら意味が無い！」何て男らしい事言ってくる。流石に一筋縄でいかなくなってそれはそれで楽しい気もするけれど、あんな色気も何も無いお誘いされても僕その気にならないしな〜
そう考えていたマツバは、極力端的に簡単に聞いてみる事にした。勿論言葉は選んで。

「若しかして発情期なの君？」
「人間は万年発情期だぞ！発情期を限定してないと言う選択をしたからこそ他の動物とは違う進化を遂げたって言う説もあるんだ！だから発情期かと言われれば私はそうだ！と言うし逆に言えばお前も毎日発情期真っ只中だ！」
なんて真面目に答えられて、一応学者の端くれだったと言う事をしみじみ思い知らされた…ミナキ君、どうして君はそんな出っ張ってるところと引っ込んでるところが極端なの？僕もだけどさ、人の話の言葉の表面だけ読み取らないでさ、中身まで考えようよ推敲しようよ、頭いいじゃない君。
無論、お互いの腕や足、体は組み手の如き動きをし続けているわけだけれど、日頃スイクン追っかけたり論文に追われている君とは地力が違うんだよっ！
そう胸の中で叫びながら、僕はミナキ君の甚平の襟を掴むと太腿の内側に自分の太腿を差し込んで払い上げミナキ君を布団に叩き付けた。布団に押し付けるなんて僕の最大限の優しさを、ミナキ君は是非とも汲んでほしいな。

「むぎゃ！痛い痛い！」
受身が上手く取れなかったからって騒いでいるミナキ君にあのね、と自分で仕出かした事を忘れている子供にものを教えるようにご無沙汰の成り行きを教えてやった。
「僕は繁殖行動中にスイクンの話をし始めた人とは暫く繁殖行動遠慮させてもらいたいんだよ」
「それは誤解だマツバ！」
「何がちゃうねんあんさん、いい感じの盛り上がりの時に思い出したようにスイクン自慢されてご覧？萎えるから、いくら愛してる人の話でも僕の股間のドラゴン萎えてしまうやろ!」
「ま、マツバが下ネタを!?そ…そんなに嫌だったなんて知らなかった。解った、もう言わないから、お布団の中では言わないからマツバ離して、押し付けられるよりギュってされたいんだぞ？」
「じゃあもう暫く反省してもらおうか、あと一時間。身じろぐ度にちょっとずつ関節決めていくから」
「え？そ、そんな酷っあだだだだだ！」
結構動いたからキツめに締めると流石に痛かったのかミナキ君が悲鳴を上げるがまあいいや、山場を迎える手前でいきなりこの前スイクンに遭遇したんだ！なんて空気読まない発言してくれた君には調度いいんじゃない？
「よかったねミナキ君、今晩は眠れなくなりそうだ。主に痛みで」
「こんなの嬉しくない、こんなんで今夜は眠れなくなるの嬉しくない!!」
「喜んだはるわ〜、僕も嬉しいわ〜」
「こんな時だけエンジュ弁使うなっだだだだだだだだ!!!!」

ミナキ君、今晩は寝かさへんで？

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お題頂いていたものですが、最初はこんな二人ともはじけていなかったんです。
何故か…格ゲーのノリになりました

14/12/30