小説 | ナノ





青い星(ゲントウ)






「怖かったなら、星だと思ってください」
見上げる先、薄暗がりの中の顔はよく解らない。だが、日頃仄冷たいなと思っている指が頬に肩に腕に、そして今申し訳程度にめくったシャツの裾にもぐりこまんとせんととひらめく度に熱を帯びていくのが解る。
「星?」
「星は瞬き最後は落ちます、落ちたらもう上がる事は無いものです」
だから
「私の行いが、ほんの僅かでも怖いと感じたら…星が落ちてきたのだと思ってください」
何か言おうとした時潜り込んできた手が指が腹の、筋肉の皮膚のデコボコをゆっくりと確かめるように撫でる見た目よりも節榑れている指の腹の熱に、ひゅっ、と息を詰め飲んでしまい言葉が出なかった。
外気に触れた肌が、露になっただろう胸元に鼓動が一つ高くなり歳甲斐も無く緊張にも似た何かが頭の隅に滲み出してくるのが解った。だが、それは恐れではないと形に口に出したいけれど触れられる度に腹の奥底から湧き上がる熱を押し殺すのに必死になり、中々言葉が出て行かない。
そんな私の状態なんか解っちゃないふうに、ゲンは夢の中の様に囁き零す。
「落ちた星は跡形も無く、消えるものだから」
だから…忘れてください。と額に触れる唇が掠れ震えるように言う。

つまり、犬に噛まれたと思えって言いたいのか?そんな震えた声で心にも無い事をお前は言うのか?馬鹿だなゲン、お前は馬鹿だなあ…
まるで正反対な態度で、お前の方が怖がっているのに怖いなら忘れてしまえと言う頭上の上にいる男の顔を想像しながら、奇妙な緊張感とふわふわと沸き立った感覚をこなしたトウガンは男の名を呼ぶ。
「ゲン」
その声に静かにはい、と答え動きを止めるゲンにトウガンは問うた。
「その星が落ちる先は何処だ?」
「…え?」
解らない、と言う風に首を傾げたのが暗がりに慣れてきた目に写り始めその姿に
「その星は空から落ちたら何処に行く?」
と重ねて問うと続けると少し考えながら、行き先はありません。と返事をしてきた。やはりな、と喉の奥で笑いながらトウガンは自分の胸元に置かれた手に自分の手を重ねながら星の行く先を示した。
「それなら私のところへ落ちて来い」
「……へ?」
…意味が、意図が解りません。と相変わらず弱い声で見下ろしてきているゲンに、行くところのがないのだろ?なら私のところに落ちてきたって構わないじゃないかと誘えば意味を理解したのか暫し考える素振りをしながら
「…………いいんですか?」
と伺って来る。
「よくなければ、こうなってないだろ?」
だから、無駄な遠慮はするな。と迄は言えず、目蓋の上で僅かに柔らかさを増した声が落ちてよかった…と溜息の様に零れ青い星と目が合った。

星と例えた彼の瞳が、暗がりの中満天の星空の様に煌いた気がした。






お題頂いて書いたんですが一番恥ずかしかったです…どんどんゲンさんがロマンチストに変身していくのです。


14/12/30