小説 | ナノ





案ずるより産むは易い(ダツジン)






自分でい言うのもアレだが、俺はファクトリーヘッドの肩書きに似合う性分なのか非常に好奇心が旺盛な大人だ。
寧ろ好奇心旺盛なクソガキの儘趣味と実益をかねた大人になっちまったと後付の様に思うけど何を言いたいかと言われると要するに、目の前に興味と好奇心の対象が転がっていて指を咥えて黙っていられる性質では無いと言う事だ。

バトルフロンティアのブレーン達は施設の関係上結構会議と言うか週一で朝礼みたいなのもするし終業後には一緒に食事をしに行く事もしばしばあるが日頃は施設の関係で、ちょくちょく顔を会わせる訳ではない。
それでも書類のやり取りで相手の施設に足を運ぶ事もある。だから今、俺はこの状況に当たっている訳で。

バトルピラミッドの執務室に当たる部屋にこの施設の主であるジンダイを尋ねて俺はやってきた訳だがノックをしても返事が無い。可笑しい、個人的に仲良しとは言えないが仕事仲間としてはいい付き合いをさせてもらってるしジンダイ―おっさんは真面目な奴だから嫌な奴が目の前にいても挨拶は必ずするし返事もするのに。
「おっさん?」
扉越しに声をかけても返事が無い。不思議に思ったダツラは少し考えた後「開けるぞ」と一声かけてドアを開けた。その向こうのテーブルに向かって―
おっさんはとても珍しく、転た寝をしていた。

テーブルの上に積み上がる紙の山、ちらりと覗けば論文だろう。元探検家、現役の学者は流石忙しいな〜と他人事の様に思いながら椅子の背凭れに凭れ掛かりうつらうつらと舟を漕いでいる同僚を眺めながら俺にも仕事があるので、俺は非情にもおっさん、書類。とおっさんに声をかけるが余程疲れているのだろう、俺の声に反応せず静かに俯いている。
こりゃよっぽどお疲れですかー、と態とらしい感想を抱きながら更に声に力を込めておっさん、書類!と軽く肩を叩けば本当に眠っているのか想像以上に体が揺れ、ぎくっと心臓が悪い脈を打ち体が咄嗟の動きの為の準備を瞬時に取ったがおっさんは椅子から倒れ落ちる事は無く、俯いていた体が少し仰向けになる程度でまた寝息を立て始めた。おいおい
「何でマジで寝落ちてんだよ〜、仕事中だろおっさ」
ん、と全部口に出すつもりの呼びかけが喉奥で張り付いた。
揺すった衝撃で太腿に落ちた手を目線が追い―思いの外に細く色の白い事に気付き、それに目が釘付けになった。
なんだ、このおっさん顔の割に意外と細いのか?世界を又に掛けた探検家だったんじゃねーのか?それならもっとごついんじゃねーのか?工場長の癖にごついって言われる俺の事は今は棚に上げといてもこのおっさんなんか細くね?
よくよく見れば顔も別に不細工じゃない、寧ろ整っている方だ。興味が湧いたものに釘付けになり好奇心旺盛ながきの様に観察し始めるのは癖なんだ。自分で止め様と思って止められるものじゃない。考えれば考える程、気付いてしまったおっさんの知らないところがどんどん気になってくる。
そう言えばゲートルを巻いた足も足首も存外に細いし、それを強調するような白いゲートルはぴったりと脛と足首に巻きついてるし、足の形が露でそれがなんとも言えず興味をそそる。
興味は勿論中身の話だ、その靴の下ゲートルの下、服の下にしまわれたその体…あ、俺そんな趣味は無いと思うんだけどでも気になったからには毟ってみたくて堪らない。
ぐっすり眠ってる事だし、ゲートルを解くとか襟のボタンを外すとか、袖口から手を滑り込ませて太さ形をを確認するとか裾から手を入れて足を撫で回すとかとか…それくらいならやっても大丈夫じゃないか?ああ、やってみたい事は山ほど頭の中に思い浮か――

「…で、なにをしてるんだクソガキ!」

なんて思いながらおっさんの足下にしゃがみ込んでいたら、言葉と同時に頭に勢いよく硬い何かが落ちて来て目蓋の裏に瞬く星とジラーチが見えた。目の前にあった筈のおっさんの足が一本減っている。この、おっさん…
「起きてるんならそう言えよ!くそ痛ぇじゃねーか!!」
「やかましい!何をしてたのかと聞いてんだぞクソガキ言え!!」
「いきなり安全靴踵落としって何考えてんだテメー!」
「怪しい貴様が悪い!何してたんだコラぁあ!!!!」

この後おっさんと掴み合いの喧嘩になって、その騒ぎをおっさんの部下達に伝えられたヒースとコゴミに喧嘩両成敗で蹴り飛ばされた俺達は、他のブレーンに長いお説教を喰らう事になったが俺の興味と好奇心が消えたかと言われたらそれは全くの別問題だ。
あの服ゲートル毟り上げるまで、つきまとってやる。






此れもお題いただいて初めて書いた組み合わせです、不思議とするするまとまったのでか、書きやすいんですか?工場長と隊長はと首を傾げました。

14/12/30
俺に好奇心と興味を捧げられた事、後悔しろよ?