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若い燕は鳴かない(Nアデ)






どうにも最近、すっきりせん。

いや、トイレの話じゃないぞ?そっちは毎日快調…ってそういう話ではない!
プラズマ団の一件が解決してから、リーグに腰を据えてトレーナーを待ち構えておるがそれに関しては自分でも意外な事に不満が湧いてこなかった。
久し振りに腰をすえたチャンピオンの間は古巣に戻ったようで居心地はいいし、四天王は紐帯が深まっていたのか己が出奔した当時よりも随分いい空気を醸し出していた。まぁ、暫く四人に口煩く説教はされたがの…
と言う訳で血が滾り、胸をわくわくさせるバトルには思いの外恵まれていたので不満はない。

はて、他に何か不満があったかの?孫は―今何処におるのやら、他の身内にも昨日会ったばかりだしシャガは小言が五月蝿いけどこの前のリーグの全体会議で会った、アイリスにも会った。アイリス可愛かったの〜
トウヤトウコ、チェレンにベルもリーグに来たし………ああ、一人おった。
そしてこのモヤモヤも、その会えていない一人の所為だと、流石にとぼける程の若さはとうの昔に過ぎ去っているので儂はあっさりと認めてしまう事にした。己の弱さを認めるのも強さの一つじゃしのぅ…

会えてない一人は…プラズマ団の仮初の王、Nの事だ。Nと儂の関係は何かと問われたらこれ、と明確に答える事が出来ない。否、出来なくなってしまったのだ。
何時の事だったか自宅で眠っていたある晩の深夜、突如寝室に押し入ってきたNに何をしにと問う間もなく言い包められ儂はつい、と言うかあっと言う間に服を毟り取られ――
気がついたら、体の関係を持ってしまっていた………


言い訳がましいと言われようが儂に同性とナニをする趣味は無い。弟子とそう言う関係だったかとよく聞かれるがレンブにそんな感情を抱いた事は一切ないしこれからも無い!とはっきり言い切れるのじゃが、Nにはその後も何度も深夜に訪れる度に言い包められ、なぁなぁの済し崩しにそのような関係を続けてしまっている。
なので恋仲か?と言われたらそうとは言えないし、体だけの関係か?と言われるとちょっと其処まで、と日中遠出をすればしばしば出会い、話をしポケモンバトルをする仲でもあるのでそうとも言えない。
しかも、その夜の行為はNが夜に…つまり夜這いじゃな、夜這いしに来たときしかしない為間隔がまちまちで次の約束なんか取り付けた事は一度も無い。だって終わったら気だるいし、Nが寝物語に話してくれる話題を聞いている内に寝てしまうし……ああ、つまり!

今の儂は…欲求不満じゃ。こっ恥ずかしい事この上ないが二週間以上前のあの夜をうっかり思い出してしまったからには意識しない訳にもいかん。寧ろもう無視が出来ない、モヤモヤの正体が夜の欲求不満だなんて年甲斐も無いとか言われると益々恥ずかしいけど儂生涯現役のつもりだもん!欲求不満で悪いか、最初はあれじゃったけどこの前は気持ち良かったんじゃもん!!
って…
「何一人でこんな気持ち悪い事、考えとるんじゃ儂…」
第一あの男が悪いんじゃ、連絡も寄越さんし気紛れに真夜中に忍び込んでくるだけじゃし忍び込むにも前々に言ってくれてれば…?あれ?ひょっとしなくても儂、

「待つ必要は無いんじゃないのか?」
何故か口から飛び出し、はっとして口を押さえるが今日はまだ挑戦者が訪れる気配も無く、チャンピオンの間は静けさを保っている。それに胸を撫で下ろしながらアデクは口に出した考えを再考する。連絡を寄越さないのならこちらから何かに理由つけて呼び出せばいいんじゃないのか?そうだ、そうすればいいんじゃ、夜まで粘ればなんか―そんな雰囲気なるかもしらんし。
こんな時の為にメカがあるんじゃないのか?そうじゃ、こんな時こそレンブに此れだけは持っていろと押し付けられたライブキャスター(旧式・シルバー使用)の出番ではないか!儂機械苦手だし電話も持つの面倒だって言ったらそれでも持てやと弟子(の眼)が言ったから渋々持っておったがこんな時に役立つとは…

さあこれでNを呼び出―――
と腰のポーチに放り込んでおいたライブキャスターを手にとって画面を起動させながら儂は今更の事実を思い出し絶叫する。
「儂、Nの番号知らーーーーーーーーん!!!」

そうじゃった、このライブキャスターには弟子のレンブと部下のギーマ、最近弟子入りさせろと五月蝿いチェレンと昔馴染みのシャガのだけしか入っておらんかった…しかも電話しか出来ない。メールなんて当然出来ないしそもそも件のNがライブキャスター自体を持っておらんかった……取り越し苦労であった。
頭を左右に振りながら一人で叫んだり立ち上がったりしゃがんだりと、自分の喜怒哀楽とテンションのアップダウンにアデクは疲弊感を隠さず、役立たずな機械をポーチに戻し全く連絡の取る手段の無いNに八つ当たりもいいところな感情を胸の中でぶつけた。

N、一体全体何処におるんじゃーー!儂淋しいんじゃーーーー!!






頂いたお題です、初めて書いた組み合わせでなんとも挑戦的でした。


14/12/30