拍手6「踊り」 ・ズミガン 「カルネさん、お願いがあります」 「ズミ君がお願い?珍しいのね、どうしたの?」 「実は、今度あるパーティの料理を作る事になったのですが」 「うんうん」 「何故かパーティの方にも呼ばれてしまい、お断りしたんですがどうしてもと押し切られ参加する事に」 「いいんじゃない?パーティ楽しいわよ」 「唯談笑してるだけならばと思ったんですが…」 「が?」 「ダンスが…あると」 「ダンス?社交ダンス、よね?」 「はい」 「随分ちゃんとしたパーティなのね」 「私は踊れないので、その旨をお伝えしてお断りしようとしたんですが連絡がつかなくて招待状も届いてしまいお断り出来る状態じゃなくなってしまいました」 「あらら、タイミング悪かったわねズミ君」 「カルネさん、初歩の動きだけでも教えてもらえませんか?」 「え?そんな事?いいわよ、私でよければ」 「有り難うございます」 じゃあ時間作っておくね〜、とヒラヒラ手を泳がせて持ち場へ向かうカルネの後姿に再び感謝しながらズミは胸を撫で下ろした。いくら望まないパーティとは言えマナーが不調法では先方に申し訳が立たない。 そう真面目に考えたズミだが、別に料理人が踊れなきゃいけないと言う法はこの世にない。 数日後― 『ズミ君この前の話なんだけど』 「時間は取れそうですか?」 そう尋ねるズミに、ホロキャスターの向こうのカルネは申し訳なさそうな顔で状況を説明をしだす。 『ごめん!撮影押しちゃって暫く時間取れそうにないの!』 「そうですか、では予定が付き次第連絡を…」 『本当にごめん、私が予定空く迄のピンチヒッターお願いしたから!先にその人と練習しててね、』 「ピンチヒッター?どなたの事ですか?」 『んとね―、あ、撮影始まるから!私より上手だから大丈夫よ、じゃあズミ君も頑張ってねー!』 「お、ズミ殿」 「ガンピさん、どうしたんですかこんな所に」 「うむ、カルネ殿に此処に来いと呼ばれてまいったのだが、カルネ殿は?」 「は?」 「用があるのと、後頼みたい事があると言っておったのだが…ズミ殿は如何なされたのだ?」 「…………まさか、おい!」 ピンチヒッターは、この人の事なのか?!カルネさん、ちょっと!説明して下さい!! ズミの要求も虚しく、ホロキャスターはカルネの留守電に繋がるのみだった… ・マツミナ 「マツバマツバ、今日は夏祭りがあるらしいぞ!」 「ああ、そう言えばそんな回覧板きてたね」 「行かないか?祭りに出くわすのは久し振りだぞ!」 「祭りは移動性のポケモンか何かなのミナキ君、エンジュの祭りは毎年エンジュで開催されるよ?」 「でもお前去年そんな話しなかったじゃないか!」 「そうだっけ?忘れちゃったよ」 都合が良すぎるぞマツバ!プンスカ、なんてオノマトペが聞こえそうな怒り方をするミナキ君を眺めながら、適当な相槌で誤魔化して話を進める。 「今年は行かないか?途中花火上がるって書いてあるし」 「ミナキ君は屋台が目当てでしょ?」 「そんな子供じゃないぞ私は!最後は盆踊りで〆だって言うし、なかなか風流じゃないか」 「うん、エンジュの定番だよ」 「お前は踊らないのか?生粋のエンジュっ子だろ?」 「僕の盆踊りに敵う踊り手はエンジュにはいないよ」 「え?お前が?なんか似合わないな、でも此処何年か祭りも行ってないんだろ?一体どうしたんだ?」 「いや、毎年景品を掻っ攫っていたら何年か前に出禁喰らってそれから踊れてないだけだよ、祭り自体は参加OK」 「上手すぎじゃないか?お前ソレ天才じゃないか?!」 「後増えるから駄目だって」 「何が増えるんだ?」 「密度が」 「は?」 「だから、僕が踊ると帰省した面子や踊ってる面子の人口密度が倍以上になるから駄目だって言われたんだ」 「一体どう言う―」 「…言わない、」 君怖がるからね、 な、なんだマツバ、何が増えるんだどうして増えるんだ、お前が踊るとどうなるんだ??想像し過ぎて脳内の情報が過多になってるミナキに、マツバは何時ものぼんやりした顔でこう切り出した。 ミナキが首を左右に振るのを見越して、のつもりで。 「確かめに行くかい?ミナキ君」 |