300字SS
記憶


疲れたからと、いつもより早めにベッドへ入った。
部屋の隅に置かれたワット数の低いルームライトは天井を照らし、優しいオレンジの光を拡散させる。
隣に眠るアンジーは小さな寝息をたてていた。
目を閉じて静寂を感じていると 、隣の住人が帰宅する音がした。
突然ガバッと身体を起こし、僕の腕を掴んで震え出す。


「外に誰かいない?」

「いないよ。隣のダラスが帰ってきただけさ」

「でもガタガタって…」

「酔っ払って帰ってきたんだ。何かに躓いて転んだんだろ」

「そんな音じゃなかったわ。何かこう…」


説明を始めるアンジーを抱きしめる。


「君は任務を終えて帰ってきたんだ。もう戦争は終わったんだよ」


終戦して数年。

彼女の戦争はまだ終わっていなかった。



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