記憶
疲れたからと、いつもより早めにベッドへ入った。
部屋の隅に置かれたワット数の低いルームライトは天井を照らし、優しいオレンジの光を拡散させる。
隣に眠るアンジーは小さな寝息をたてていた。
目を閉じて静寂を感じていると 、隣の住人が帰宅する音がした。
突然ガバッと身体を起こし、僕の腕を掴んで震え出す。
「外に誰かいない?」
「いないよ。隣のダラスが帰ってきただけさ」
「でもガタガタって…」
「酔っ払って帰ってきたんだ。何かに躓いて転んだんだろ」
「そんな音じゃなかったわ。何かこう…」
説明を始めるアンジーを抱きしめる。
「君は任務を終えて帰ってきたんだ。もう戦争は終わったんだよ」
終戦して数年。
彼女の戦争はまだ終わっていなかった。