300字SS
女優





無駄に広いだけの廃墟ビルは電気など通っているわけもなく、窓から僅かに入ってくる遠くの街灯が、ぼんやりと内部を浮かび上がらせるだけで、暗闇には変わりない。
雨音を聞きながら銃を取り出し確認する。
覚悟を決めたとはいえ、最後となるであろう戦闘は心を揺らす。
静かな雨に紛れて足音が聞こえてくる。走馬灯のように思い出されるアナタとの幸せな、演技であって演技ではなかった日々。
キィ〜と金属の雑音が聞こえ、銃を向ける。
驚いたような顔の男に小さく微笑む。

「まさか、アナタとこんな形で再会するとは思わなかったわ」

引き金を引く。

さあ、愛するアナタに最後の演技を見せましょう。
アナタを愛してなどいなかった、という演技を



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