300字SS
春涙




式が終わると、仲の良い友人同士で固まり、写真を撮り合い、泣き出す子を宥めたりと、校門は賑やかにごった返していた。
そんな同級生を横目に、私は校門を出て行く。
慣れた通学路を歩くのも、今日で最後かと思うと、嬉しいようで少し寂しい気もした。
足を止め、脇道に入り、住宅街を抜け、ベンチしかない公園に寄り道する。
誰もいない事を確認し、ベンチに座った。
鞄の中からパスケースを取り出す。定期券の裏に忍ばせた写真を抜くと、ぎこちなく笑う、真新しい制服を着た男の子がいた。

「一緒に卒業したかったな」

笑顔を向けると、視界が歪み、溢れる涙が静かに落ちる。
頬を撫でるようにふわりと暖かい風が吹いた。



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