灯火
不意に目が覚める。一面に広がる暗闇から不安に襲われるが、隣から聞こえる規則正しい小さな寝息にホッとした。
顔を横に向けると、闇の中にもかかわらず、薄っすらと白い姿が浮かんで見える。人とは違う三角の耳は伏せられたままで、動く気配はない。
そっと手を伸ばす……とぼんやりと橙が灯る。
「どうした?」
ピンと立ち上がる耳とゆっくりと開かれる金色の瞳。
「あ、えっと……」
問われるも答えられずに口籠る。小さな手が伸びて頬を撫でた。
「眠れぬのなら我を抱け」
「あ、うん、ありがとう」
小さな身体を抱きしめると、ほんのりと獣の匂いがする。
「安心して眠るがよい」
そう言って彼女の灯す橙の暖かい光は静かにゆっくりと消えていった。