煙管
巳の刻にはお天道様はすっかりと天高く昇り、自然と目が覚めてしまう。のらりくらりと布団から起き上がり、障子戸に手をかけ、そおっと開けると少し冷やりとした風が入ってきた。
人通りの疎らな様子は、夜の賑やかさが嘘のように思うほどの静けさ。煙草盆に手を伸ばし、煙管を指先で掴み、丸めた刻み煙草を火皿に詰め、炭火に近づけ火を点ける。吸い口を咥えてそおっと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出すと、ゆらゆらと揺れながら煙の香りが部屋に染みていく。
――差し出した煙管を受け取ったのは、只の気紛れか気の迷いか?
ふふと笑みを零す。
――太夫と呼ばれても所詮は遊女
灰吹きの縁を煙管でとんと叩く。灰を落としてから朝風呂へと向かった。