300字SS
試練




 数分前まで青い空が広がっていて、少しも降る様子などなかったのに、いつの間にか山脈を越えた薄雲が流れてきたようで、気づけば辺り一面が白に覆われていた。進んでも進んでも真っ白な世界に、自分の運転する車だけが色を持っていて、穢れの差し色を施しているような錯覚に罪悪感が湧いてくる。
「まいったな……」
 もう少しで燃料が底を尽きることを知らせる赤が点滅している。目的地まで一時間。暖房を弱め、少しでも無駄を減らす。ほとんど信号が無いのが救いだと嫌味な笑みが零れた。
 目の前には果てしなく続くホワイトアウト。この世を埋め尽くすほどに降り続く白は、人間の犯し続ける罪に罰を与えるように、深く深く飲み込んでいった。




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