300字SS
珈琲




細い路地から斜め向かいの雑居ビルの入口を見つめ続けてかれこれ10時間が経とうとしていた。情報でホシは立ち寄るだけと聞いていた。
「ガセかよ……」
長くなるとは思っていなかった為、煙草も切れて余計にイライラしてくる。しかも陽が落ちて徐々に寒さが増していく。コートの襟を立てて、気休め程度に体を丸めた。
「っ!」
頬が急に熱くなり、体がビクンと震える。
「お疲れー」
聞き慣れた呑気な声に力が抜ける。
「なんだよ」
「寒くて凍えてんじゃねーかと思って」
スッと缶コーヒーを差し出す。
「そんなにヤワじゃねーよ」
言いながらコーヒーを飲む。
「あ、そういえばおめでとう」
「なにがだ?」
「誕生日」
言われるまで、すっかり忘れていた。



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