300字SS
口実




 オートロックの前に立ち、三桁の番号を押してコールボタンを押す。
『はい』
「俺ー」
 カタンと音がする。ロックの解除された自動ドアから中に入り、エレベーターに乗って部屋に向かう。もう一回、ドアの脇のボタンを押す。ガチャリと鍵の外れる音がすると、ドアが開く。
「また飲み会?」
 両手を腰に当て、呆れ顔で迎えてくれる姉の部屋着姿に、顔がにやける。
「うん」
 靴を脱ぎながら答える。
「もう……いつも急なんだから。来る時は前もって連絡してよね」
「はいはい」
 部屋に戻る姉の後についていく。酒が飲めるようになり、飲み会を口実にして、家を出た姉の家に泊まりに来るようになったのは、姉のことが好きだからということは内緒だったりする。



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