300字SS
秋空



 青く澄んだ空の向こう側にもくもくと沸き上がる真っ白い雲の塊が、いつの間にか現れなくなり、ねっとりと纏わりついて離れない湿度の高い空気も、いつの間にか消えていた。ただそこに存在するだけで汗を滴らせ、常に不快指数を最高値に上げていた季節が、少しずつ終わりを見せていた。
「どうした?」
「夏も終わりだな〜って思って」
「ああ……そうだな」
 背後から回された腕の力が強くなる。
「戻りたいか?」
 低く寂しげな声に首を横に振る。
「秋の空って綺麗よね」
 夏を司る任に就いていた頃には越えることのなかった『秋』という季節。
「羊雲って可愛い」
 力強い腕に頬を寄せる。
「季節って面白いね」
「ああ」
 人間になって、三度目の秋を迎えた。



← →
page list



bookshelf
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -