300字SS
進道



手には薄茶色の封筒
中には名前の記載に
採用と書かれている
一枚の白いコピー紙

「大手狙い?」
「採用されないって」
「どんだけ自信あるの?」
「無理無理」
「時間の無駄」
「でも大手は将来安泰だよね〜」
「よっぽどのことがない限り倒産しないでしょ〜」
「年収一千万?」
「セレブ?」

ケラケラ笑って
勝手に話を作って
膨らませていくのは
マスコミ以上に思えて
苦笑いしか返せなかった

受けたい企業ではない
ただ親に言われたから
小さい頃からの刷込が
私の人生を決めていく

『親の言うことが正しい』

そう思っていたのは正解か否か?

疑問が頭をぐるぐると回り出す
不安と期待と随順と選択と自由
正しい答えは見つかるでもなく

ただ私は手の中の白いコピー紙を
ビリビリに破り捨てる

ひらひらと舞う姿は
桜が散る様に見えた


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