細氷
「うわぁー!寒い!」
温かいホテルのロビーから外に出ると、一瞬で凍り付く程の冷気に包まれる。既にエンジンをかけていた車に乗り込むが、まだ温まっていなくてダウンコートを脱ぐことができない。
「走ればすぐに温まるよ」
そう言って慣れたように車を発進させた。市街を抜けると、あっという間に雪原が広がり、信号がほとんど設置されていない国道を走っていく。十分も走ればダウンコートが邪魔になるほどに車内は暖かくなり、ゴソゴソと脱いで後ろの座席に放り投げる。
「着いたよ」
車は何もない脇道で停まる。雪原の中がキラキラと輝いていた。
「ダイヤモンドダストだよ」
初めて見る美しさに思わず外に出てしまい、再び凍り付いてしまった。