麦酒
開け放たれた入口に掛けられた暖簾を潜り、空いてるカウンター席に座る。おばちゃんがおしぼりを差し出し、それを受け取りながら、生ビールを頼む。冷たいおしぼりを広げ、手を拭いた後に、顔の脂を拭うようにゴシゴシ拭く。顔からおしぼりを離すと同時に漏れる息。
「はぁ〜」
顔がサッパリすると、少しだけ疲れが取れるような錯覚をする。
「はい、生ビール」
差し出されるままに受け取ると、キンキンに冷やされたジョッキの取っ手が気持ちイイ。つまみを何点か頼む。厨房に戻るおばちゃんの後姿を見送り、ジョッキに口をつける。ゴクッゴクッと喉を鳴らす。苦くて口内を刺激する冷たいビールが、暑さに火照る体を優しく静かに冷やしてくれた。