ポーカーフェイス
窓際の関節照明が
ぼんやりと室内を照らす
静寂に包まれた部屋
僅かな衣擦れの音だけが
人の存在を知らせる
寒くもなく暖かくもない
適温に設定された室内
漏れる甘い声と熱い吐息
少しずつ熱を生み出し
ベッドの中で絡まり合う
熱く火照る躰と
求め合う欲情
厭らしく絡まり
溶かしていく
互いの欲を吐き出し
荒い呼吸が落ち着くまで
汗を纏う躰を重ねたまま
互いの熱を鎮めてく
徐々に冷えていく身体は、先程までの行為を忘れさせるような気がして怖くなる。
彼の背中に手を回すと、触れ合う素肌から彼の体温が伝わり、少しだけ安心できた。
「…どうした?」
頭の上から聞こえる彼の声は、いつもと変わらない低さで、いつものように胸が大きな鼓動を打つ。
「ううん、何でもない」
「そう?」
「うん」
そう言って彼の広い胸に顔を埋めた。
小さく息を吐き、頭を優しく撫でる彼の大きな手は、私が此処に存在しても良いと言っている気がして、嬉しくなる。
「お前って…猫みたいだな」
「なんで?」
「頭撫でてると、そのうちゴロゴロ喉鳴らしそう」
「鳴らさないよ」
「んじゃ、こうしたら?」
撫でていた手で額に貼り付いた髪を払い、唇を当てる。
優しく撫でるように下りてくるくちづけに、小さな声が出てしまう。
「ほら、鳴いた」
何時の間にか愛撫を始める彼の手は、すぐに身体を熱くさせる。
「また…啼く?」
答える代わりに、彼の唇に自分の唇を重ね合わせる。
それを合図に、再び躰を絡ませ始めた。
いつもポーカーフェイスの彼
私の前ではその顔を崩す
優しい微笑みと
愛しむような眼差し
快感に耐えるように
苦しそうに歪ませる顔
欲を吐き出した後の
解放されたような緩んだ顔
力無く私の上に倒れ込み
荒い息を吐きながら
私の首元に顔を埋める
そんな彼が愛しくて
大きな背中に手を回し
抱きつくように
彼の体を抱きしめる
「お前の顔…崩すのは俺だけだよな」
そう言う彼に答える
「あなたの顔を崩すのは…私だけだよ」
お互いに顔を見合わせて
小さく笑った