重い資料運びをしていたらさりげなく手伝ってくれた
『失礼しました』
僕の後に続き、職員室から出てくる君を窓から差し込む紅い陽を背に待つ。
「玉緒先輩、ありがとうございます。すごく助かりました」
君はにこりと笑って、丁寧に頭を下げた。
「そんな、いいよ。たまたまだしね」
たまたまだなんて言いつつ、本当は美奈子さんが僕の教室の前を通って行くのを見て追いかけたんだ。
放課後残って、クラス委員の雑務をこなしていて良かった。
僕の目が届くところで、僕以外の誰かに君の隣を奪われるのを見るのなんてごめんだ。
美奈子さんの隣にいていいのは僕だけ。
本当は、僕の目が届かないところでも、譲りたくないっていうのが本心だけど。
君にもね、そう思って欲しいんだ。
だけど、こんなこと言ったら引かれてしまうよね。
だから僕は、君を目の届く範囲においておくことにしたんだ。