short stories*R-18 | ナノ


触れて感じて



ここにいる。

繰り返し何度も夢の中に出てきてはいやらしく振る舞い、そのくせすんでのところでたち消えるお前がここにいる。

夢なんかじゃねぇ。
今俺の腕の中にある確かな感触、温もり。



最近の俺はどうかしてる。
美奈子と一瞬にいるってだけなのに、あのコトだけしか考えらんねぇくらいになっちまってる。
もっとくっつきてぇとか一時も離れていたくねぇとか…腕の中に閉じ込めて朝かも夜かも分からないほど愛してやりてぇとか。

たかが女ひとりに。
されど女ひとりに。

俺がこんなに女に対して甘ったるい思いを抱くなんて。
…ンなこと、誰にも言えねぇ。

はぁ…ありえねぇ。
美奈子との行為を思い出すどころか、美奈子とはまだそういう関係にゃなれてねぇってのに。


世間一般でいう「付き合ってる」という関係になって早3か月。

…俺の我慢もそろそろ限界だ。

なのに美奈子は、俺の気持ちを知ってか知らずかやたらめったら触ってくる。

一緒に出かけた先の映画館では、俺の脚に手を乗せてくるわ、帰り道には俺の左腕にアイツの両腕を絡め付けてくるわ、家に帰りゃ俺の横にぴったり寄り添ってくるわで…常に俺の身体のどこかを触っている。

元々スキンシップの多いヤツだったが…美奈子のスキンシップは度を超している。
一度どうしようもならなくなって、覚悟出来てんのかって問いただしたら、
「コウくんのこと信じてるから…」
ときたもんだ。

穢れを知らない純粋な目で見られて、ンなこと言われた後に手なんか出せるわけがねぇ。

その時から俺は、必要以上に美奈子に触れることが出来なくなり…それは、たとえ美奈子と一緒に住んでいようとも、変わんねぇことだった。


…そこにアイツが絡んでくるまでは。



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