short stories*R-18 | ナノ


rain 02-夏時雨-


心まで奪うことが出来たなら。

そしたら、俺も美奈子もこんな思いをせずに済んだのに。


あの日からずっと続いてる一方的な交わり。
果ての見えない欲望は誰にも止められない。
美奈子を好きという気持ちは、ただ身体を求めるだけの欲望に変わっていってしまったのだろうか。

美奈子は俺に囚われてると思ってるかもしれないけど、ホントのとこは全然違う。
俺の方が美奈子にずっと囚われ続けてるんだ。
「わたし、美奈子っていうの。あなたがるかくんで、あなたがコウくんっていうんだね。なかよくしてください」
そう言って光のようなほほ笑みと共に手を差し伸べられた、初めて出会ったあの日からずっと。


「おーい、琉夏くんいるー?入るよー?」

俺の返事も待たずにダイナーに上がり込んできた美奈子。
そのまま階段を上がってくる音がする。

ああ、来ちゃったんだ。
ごめんな、美奈子。
俺、もう美奈子を自分のものにすることしか考えらんないんだ。

たとえ、お前がコウのことを好きだとしても。


「もうっ、琉夏くんったら。いたら返事くらいしてよね。私が泥棒だったらどうするのよ」

「ハハッ、こんな可愛い泥棒さんならいつでも待ってる。だからいつでもおいで?」

そう言ってベッドにもたれてた俺は、床を軽く叩いて美奈子に隣に座るよう促す。

「もー、琉夏くんったら相変わらずいい加減なんだから!ふふっ。あっそだ。はい、これ」

手渡された袋からは、水滴が少しだけ垂れている。

「ん、何これ?」

「アイスだよ。一緒に食べよ?琉夏くんのは、いつもコウくんのことで相談にのってくれてるお礼として奮発したんだ。絶対に美味しいよ?」

ふふっと微笑みながら小首をかしげる姿を見て、俺のペニスが思わず反応してしまいそうになる。
俺に促されるままちょこんと隣に座った美奈子から、しとやかで凛としたどこまでも清純な香りが漂う。

これって…前に美奈子に教えたコウの好きな香りだよな。
自分で教えたくせに、美奈子がその香りを纏ってることに腹が立ってくる。

でも、美奈子に似合う香りはどこまでも甘く、蜜のように引き寄せ惑わせる…俺だけにしか嗅げない香り。

今度から俺に会うときは、その香りだけを纏ってもらおう。


「琉夏くん、どしたの?アイス早く食べないと溶けちゃうよ?美味しいよ!」

「…美奈子のアイスも美味しい?」

「美味しいよー。あっ、味見してみる?」

はいっ、とアイスを持った手が差し出される。
アイスで濡れたくちびるがてらてらと光ってて、まるで食べられることを望んでるよう。

「うん、じゃあ遠慮なく…味見じゃなくて、まるごと貰うね?」

そう言って俺は、差し出された手を取り美奈子の身体を引き寄せくちびるを奪う。
ぺちゃりと床にアイスが落ちる音が耳に届く。

いきなり口を塞がれた美奈子は、抵抗することはおろか動くことすら出来ない。

夢にまで見た美奈子のくちびる。
甘くて柔らかくて…美味しい。
頭を抱え、何度も角度を変えてくちびるを味わう。

驚いた拍子に半開きになった口から舌を差し入れ、絡め合わそうと美奈子の舌を舐める。
アイスの甘さなのか、美奈子の甘さなのか。
ずっとずっと味わっていたくなる味。

その感触で美奈子は我に返ったのか、両手で俺の胸をどんどんと叩いて身体を離そうとする。
でも、俺の両手で頭と背中をがっちり捕らえられていて離れることが出来ない。

そりゃそうだ、お前の力なんて男の俺にとっちゃ赤ちゃんみたいなモンなんだよ。
だから、前に言ったよな?
俺、狼に変身しちゃうかもって。
もうお前を食べちゃうことしか考えらんないんだ。

お前がコウのことを好きだとしても。
こうすることでお前とコウを裏切ることになったとしても。
そしてそれが、三人の関係を崩すことになったとしても。

それでも、俺は美奈子が欲しい。
美奈子だけが欲しいんだ。

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