short stories*R-18 | ナノ


Season: a cherry tree in leaf


桜舞い散る季節から、生命力に溢れた力強い葉桜が咲き誇る季節へと移り変わる時期のとある日曜日のこと。

なんの予定もなく家でごろごろしていた昼下がり。
突然、着信を知らせる音が鳴り響き、携帯を確認するとそこにはあまりかかってくることのない人の名前が表示されていた。

『もしもし、おう、小波か。今ちっと大丈夫か?』

『うん、大丈夫だけど…珍しいね?コウくんが私に電話かけてくるなんて。』

『あ、ああ…それはルカがいつも…まあそれはいい。あのよ、ルカのヤローが風邪ひいちまってダウンしてんだわ。俺、今からバイトでよ…オマエ今日時間あんなら、俺が帰ってくるまでルカについててやってくんねぇか?』

『え、琉夏くん風邪ひいてるの?昨日一緒に遊んだときはあんなに元気だったのに…分かった。私、今からそっちに向かうね。なんか足りてないものとかある?』

『いや、足りてないものはねぇ。身一つで来てくれていいからよ。そんだけでありがてぇ。』

『そ、そんなわけにはいかないよ!お見舞いも兼ねてるんだから。うー…分かった。ドラッグストアに寄って何か買って持って行くから。連絡ありがとう。じゃあまた後でね。』

電話を切ると、早速身支度を整えドラッグストアを経由してWest Beachへと向かう。
それにしてもコウくん…大体のものはきちんと用意してあるみたいで。
彼女の私が出る幕はほとんどないっていう少しだけ切ないこの状況。
きっと炊事、洗濯、掃除全部ばっちりこなしてるんだろうな…。

―もしかして、最強の主夫かもしれないな。

なんて、暢気なことを考えながら歩みを進めた。
これから向かう先で何が起こるか想像だにしないまま。


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