short stories*R-18 | ナノ


Colorful


「美奈子、おせーなあ…。」

柔道場の窓から差し込む光はすっかりオレンジ色に染まっている。
冬にしては少し汗ばむくらいの陽気だったせいか、とめどなく流れる汗をタオルでぬぐいながら窓の外をみやる。

そういや、今日日直だったな美奈子。
美奈子のことだから、日直の仕事を全部きっちり終わらせてからじゃねーと部活に来ないだろうし。
教室まで迎えに行くか。
試合前で、美奈子と二人きりの時間があんまりないもんな。
よし、そうと決まれば。
大きく手を鳴らし、部員たちの視線を引きつける。

「はい、5分休憩。そのあと、個人メニューな。新名、ほらこれ、メニュー表だ。あとで皆に配って練習すすめとけ。俺のは美奈子が持ってるから、ちょっと教室行って取ってくる。怠けるんじゃないぞ。」

「えー。嵐さん、ずーるーい。俺も一緒に美奈子さん迎えにい…きません。はい、分かりました…ちゃんと練習しておきます。」

「よし、じゃ頼んだぞ。」

途中で新名を睨んだのが効いたらしい。
まあ、あいつは変なとこで気をまわすからついてくるなって言ったらついてこないはずだけど。
なんてことを思いながら、柔道場を出て教室へと急ぐ。

美奈子といわゆる「彼氏と彼女」という関係になってから、そろそろ1年が経つ。
高校入学したと同時に柔道部のマネージャーにスカウトしたから、だいたい2年間くらいはほとんどずっと一緒にいたってことになる。
だけど、最近の俺はもっとずっと美奈子と一緒に居たくなってる。

それは多分、美奈子の柔らかさを知ったから。
ぎゅっと抱きしめると、まだ緊張してるのか身体を一瞬かたくした後、俺にすべてを委ねるように身体を緩める。その瞬間の柔らかさが一番好きだ。何度肌を重ねても変わらない柔らかさ。

美奈子の手も腕も肩も背中も耳たぶもほっぺたも唇も…そして胸も。
すべてが柔らかくて、こんなにも俺と違うって事に気づいたら守ってやらなきゃなんねーって思った。

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