▼ vol.4
一人になった浴室で熱いシャワーを浴びながら考える。
琉夏くんはなんでこの世界に、もっと言うとなんで私のもとに来たんだろう。
私が叫んでたから、ってそんなの理由になる?
そしたら、叫んだ人全員のとこに行ってることになるわけで…。
謎が多すぎる。
突っ込んで聞いてみたとしても、相手はあの琉夏くん。さらりとかわされるのがオチ。
このまま、琉夏くんをこの世界に受け入れちゃっていいのかな。
勢いだけでここまで来たけどさ。
一人でうーんと唸っていたその時、曇りガラスがついた引き戸の向こう側で影が動いた。
脱衣所のドアには鍵をかけたはずなのに…。
…犯人は一人しかいないよね。
こういうトコはなんでこうも分かりやすいの、琉夏くん。
ちょうど掃除しようと思って浴室に置いてたデッキブラシの柄を引き戸にひっかける。
私、グッジョブ!よし、これで入って来れまい。
影の主が、引き戸に手をかける。開くはずのない戸を一生懸命開けようとしている。
「あれ…おかしいな…。」
「こらっ!おかしくなんかないでしょ。琉夏くん、何覗き見しようとしてんのよ。」
「だって、奏出てくるの遅いんだもん。俺、奏が倒れてないか心配になっちゃって。」
「うそばっか。まだ10分も経ってないでしょうが。」
「10分なんて、俺だったら倒れてるレベル。コウなんてもっと短いよ?」
「うそ!琥一くんのあのバッチリ決めてる髪の毛につけてるワックス?かなんかわかんないけど、それがそんな短い時間で落ちるわけないじゃない!あのワックスを落とすにはもっと時間がかかるはずよ。」
「奏…突っ込むトコそこなの?」
「あ、つい…。ってもう!早くそこから出てって。風邪ひいちゃうでしょー。」