かみなり

ここはデジタルワールドにあるとある大きな屋敷。
この日は朝から大雨が降ってずっと天気が悪かった。 空は黒くてまだ夕方ぐらいだというのに、屋敷の廊下は明かりを付けてないとまるで夜みたいに暗かった。
幼年期組は外で遊べないので退屈そうに窓の外を見ていた。 そして成長期組は外で遊べなくてもいつもとさほど変わらずにドタバタしていた。

「コラー!しおんとラゲー! 待ちなさーい!」
「やーだよー! ほら!ラゲ パース!」
「よし!」
ほぼ毎日のように怒って2体のデジモンを追いかけているのはケルビモン(善)のひめ。そして逃げてる2体のデジモンはイタズラ好きコンビであるピコデビモンのしおんとインプモンのラゲ。 どうやら今日もまた何かイタズラをやらかしたようだ。

「しおんさんとラゲさんは相変わらずですね…」
その様子をまたか…って感じで見てるのはコテモンのるぴか。 もう止めても無駄だとわかっているので、るぴかはただ見てる事しかできなかった。
その時、空が一瞬ピカッと光った。

「わっ!?雷だ!」
それを見たツカイモンのカンタがビックリして声をあげる。
「ゲッ… 雷!?!?」
部屋の隅でもう1体雷に驚いたデジモンがいた。 ファントモンのキル 実は彼は雷が大の苦手なのだ。 幼年期や成長期のデジモンならともかく、完全体である自分が雷で怖がる姿とか他のデジモンにその姿を見られたら恥ずかしい…
そう思ったキルは部屋からそっと姿を消した。

最初に空が光ってから時間が経つごとに雷はどんどん大きくなり、鳴る間隔も短くなっていた。

「雷…早く鳴り止まねぇかな…」
誰もいない暗い部屋 そこでキルは頭に被ってる布を更に深く被り、マントで体を隠して部屋にあった家具の陰に隠れて震えていた。
「俺…昔からダメなんだよな…雷が…」

するといきなり近くで何か物音がした。だが雷の音にかき消されてキルは全く気づいてなかった。 そんなキルに1つの影が迫っていた。
「あっ、キル君だー。 ねー?そんなとこでなーにしてんのー?」
楽しそうにキルへ話しかけてきたのはケラモンのケラリン。
「なっ!? なぜお前がここに…」
誰もいないと思ってた部屋にケラリンがいたのでキルは驚いて声をあげた。
「雨が降ってて外で遊べないからタイクツだよー。 キル君私とアソブ?」
「あっ…遊ばねぇよ!」
「なんで? あっ、もしかして誰かとかくれんぼしてた?」
「俺はそんな子供みたいな事なんてやってねー!」(まぁ…隠れてはいたが。)
キルは思わず大声を出してケラリンに言った。 ケラリンは一瞬驚いたが、またすぐキルに問い詰める。
「ふーん… じゃ、なんでこんなとこに隠れてたの?」
「それは…」


(ヤバイ…なんて言い訳をするか…)

キルは雷が怖くてここに隠れてたというのをケラリンに何て言い訳をしようかと考えた。 目の前にいるケラリンは大きな目でキルをじっと見つめている。

(ゲッ… メッチャ見てる…)

キルはふと首からぶら下げている眼球の形をした水晶にチラッと目を向ける。

「…隠れて待ち伏せしてんだ。」
「誰を?」
「死期が近い奴を…な。 俺にはわかるんだ。」
「し…き…?」
「そうだ。 もうすぐ何かで誰かが死ぬ。」
(もうすぐ…というのは嘘だが、とりあえずなんとか誤魔化せたっぽいな… 後は雷が鳴り止めば…)
キルは少しほっとした。

「ねぇ? キル君はどうしてそんな事がわかるの?」
「この水晶には千里眼の力がある。それで俺は全てを見通せる… だから死期が近い者がいればわかる。」
「へぇー 凄ーい… じゃ、その水晶ってキル君には凄く大切な物なんだねー。」
「無くしたり壊れたら困る そのぐらいには大切な物だから、こうしていつも身につけている。」
キルがそう言った後に少ししてから空が強く光り、バリバリーっという大きな音と共に雷がどこかに落ちた。

「ひっ!?」
「うわっ!?」
キルは再び布を深く被り、ケラリンは驚いて思わず側にいたキルに飛びついた。
「は…離れろって!」
「ゴ…ゴメン…ビックリしてつい… 私…雷苦手で…」
そう言ってケラリンはキルから離れようとしたが、その時に布を深く被ってたキルにふと目がいった。
「あっ、もしかしてキル君も実は雷が苦手?」
「そんなわけないだろ。俺はもうガキじゃねーんだし!」
そう言ってキルは姿を消してどこかへ行った。
「あー。キル君待ってよー。」
ケラリンはふとキルが言ってた事を思い出して雷が落ちた方の窓の外を見た。


「もしかして、キル君が言ってた通りさっき落ちた雷で本当に誰かが死んじゃったのかな…?」







〜end〜




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