(ジャーファルで学パロ)

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「雪積もってきたね」

マフラーの端っこから形のいい鼻を真っ赤に染まらせながら灰色の厚い雲が覆う空を見上げた。ちらちらと地上に向かって落ちてくる結晶。

わざわざ繋いでいた手を解き、手袋を外して、素肌で雪の結晶を掴もうと試みるナマエの横顔は真剣そのものだった。
大気中で生成された水蒸気のかたまりは、体温が36℃もある彼女の指先に触れた瞬間、ほんの少しの余韻だけを残して水へと帰る。そんなことをしなくとも、君の頭にはたくさん結晶がついてるよと頭を払うと少しはにかんだように笑うナマエ。

「ジャーファルは雪キライ?」

「どうしてそう思うのですか?」

「なんだか興味なさそうな顔してるよ」

「…いつもと、変わりませんが」

「うーん、そうかなあ。わたしはね、大好きだよ、雪。白くて冷たくて、食べたら美味しいし!」


「食べちゃダメですよ、ばっちい」

「気をつける」

雪に触れるのに飽きたのか、冷たさに耐えきれなくなったのかはわからないがナマエはその白く形のいい指を再び私に絡めてきた。驚くほどに冷たくなっている指先を包み込めば、優しく笑うナマエ。相変わらず、鼻は真っ赤なまま。

「昔はさぁ、雪が少しでも積もると近所のお友達と雪だるま作ったのに、もう誰も一緒に作ってくれないんだよねぇ。
みんな、窓の向こう側からみてるだけ。つまらないと思わない?」

「私も窓の向こうの住人ですけど」

「えー、もったいないよ。ねえ、今度わたしと一緒につくろうよ、雪だるま」



ゆっくりと落ちて行く雪を眺めた。雪だるまなんて、作った記憶はとうの昔に流れて行った。あの雪の冷たい感覚も、今はナマエの指先を通してしか思い出せない。


「…大きいやつ、作りましょうか」


その言葉にナマエはにっこりと笑みを浮かべたのだった。