何気ない日常
「入るぞ、透」
俺は鍵のかかっていないドアの取手に手を掛けた。ドアを開け、ベットの方へ近寄る。案の定透は寝ていた。透とは出会って長いが、たまにこういった無用心さに心配させられる。
「透、起きろ。もう朝だ」
「あと、もうちょっと…」
俺はため息をつく。このやりとりは何回目だろうか。こいつは放っておくといつまでも寝ている。いつも誰かに起こしてもらっている状態だ。これでよく一人暮らしが成立するなと毎回思う。まぁ、俺も人のことを言えるような立場ではないが。
「ほら、起きるんだ」
俺は透の体を揺する。…しかしなかなか起きてくれない。やはりいつもの手段を使うか。
「プリ」
「プリンだと!?どこにある!!」
言い終わる前に起きるとは。流石だな。いや、そんなことよりもだ。
「ん、遊星か。どうした何の用だ?」
「今日はD・ホイールのメンテナンスを手伝ってもらおうと来たんだ。後、ついでにお前を起こしにな」
いつもはクロウが起こしに行っているのだが、クロウも仕事があって忙しい時がある。だから、時間に余裕があるときはなるべく俺が起こしに来ている。
「あれ、いつもはブルーノと二人でやるじゃん」
「あぁ。だが、今日に限ってブルーノがどこにも見当たらなくてな…」
迷子じゃねぇのと笑う透にもう一度手伝ってほしいと頼むと、二つ返事が返ってきてすぐさま準備を始めていた。
「ふぅ、終わったな」
やはり透が居ると作業が速い。それに途中からブルーノも戻ってきて三人で効率よく作業を進めることが出来た。
「助かった。礼を言う」
俺は頭を下げた。透が居なければまだ作業の途中だったはずだ。やはり頼りになるな。すると透は顔を赤くした。本人曰く、褒められたりすることに慣れていないらしい。
「そ、そんなことよりも腹が減ったから飯食いに行こーぜ!」
「僕も行くよ。カップラーメン切れてるみたいだし」
確かに、朝食と昼食を抜いていた為に腹が減った。折角だし三人で一緒に何処かへ食べに行くとするか。
「あぁ、そうだな。何処へ行く?」
「まだ食べるのか…」
「ん?やっぱメンテナンスとかって神経使うからさ、腹空くんだよ」
「すごいや!もう15皿目だよ!」
「これ…大盛りのはずだよな…?」
結局18皿完食した。
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異次元な胃袋。『異袋』