葉野がDAに来て一週間が経った。最初はあんな格好だし、言動もおかしいから、周りから変な奴だと思われても当然だと思っていたが…どうやら俺の考えすぎだったようだ。天上院くん達ブルーの女子とも仲が良くなったようで、今もブルー寮に行っているようだ。このことを思わず口にしてしまったら、十代に『お母さんみたいだな』と笑われた。誰がお母さんだ、まったく。それにしても、今このレッド寮に葉野がいないせいか、とても静かだ。こんな日はデッキの調整に限るな…。

「万丈目!!助けてくれ!!」

さらばだ、俺の静かな一時。俺がデッキを取り出したと同時に、部屋の扉が勢いよく開けられて、こいつが入ってきた。ノックをしろノックを。とりあえずなんだ、と聞くと

「僕とデュエルしてよ!!」
「断る」

………
必死の形相で入ってくるから何事だと思ったら、そんな事か。思わず断ってしまったじゃないか。

「十代はどうした。あいつとデュエルすればいいだろう」
「ネオスを出されたら終わる」
「お、おぅ………」

……何というか…頑張れとしか言い様がない。それにしても、ネオスを出された時にカウンター罠を発動したりしないのか?と聞いてみると

「ネオスを出された次のターンに罠がくる」

運悪過ぎだろこいつ…。いや、十代の運が良過ぎるのか。あいつの運の強さは異常だ。

「珠希、こんなところにいたのか!!」

「ひぃ!!?じゅ、十代……!!」

またもや扉が勢いよく開かれた。十代だ。それと同時に葉野が俺の後ろへ隠れる。それを見た十代は不思議そうに首を傾げていた。

「どうして俺とデュエルしないんだよ〜?」

「だって、序盤にネオス出して融合してくるし、引き運強いし、手加減してくれないし、サレンダーは認めてくれないし…!!」

「デュエルはいつでも全力で諦めずにやらなきゃ駄目だろ?」

「それが困るから逃げてるのに!!」

はぁ…。とりあえず事情は分かった。十代から逃げるために葉野は俺のところに逃げてきたと言うわけか…。十代に見つかったとしても、今はデュエルしてるから、とかなんとか言えるしな。まぁ、十代>俺という認識に少々腹が立つが、今回は免じてやろう。…それよりも、頼むから余所でやってくれ…。これ以上被害を被るのはごめんだ。

「おい、十代」

俺は十代を見据えて言う。

「デュエルもいいが、今日はクロノス教諭からレポートの課題を出されていただろ」

「うっ!?」

「提出しなければ…また、ペナルティがあるかもしれないぞ?」

十代の顔が青くなっていくのが分かる。デュエル馬鹿め。何回遅刻用のレポートを書いているんだ。もしくは授業中に居眠りをしているか、サボるか。

「レポート書いたら絶対俺とデュエルしろよ!?待ってろ、翔や剣山に手伝ってもらって、すぐに終わらせてやる!!」

そう言って十代は入ってきた時と同じように勢いよく扉を開け、走り去って行った。イエロー寮にでも行く気かあいつは。まぁ…面倒事の元は去った。ひとまず安心だろう。あとは…

「よし、葉野。デュエルをするぞ。」

「…えぇ!?」

「特訓だ。あいつのことだ。レポートを終わらせたら、またデュエルを挑んでくるぞ。それまでに運をつけろ」

「んな無茶な!?」


こうして俺と葉野のデュエル特訓は夕食の時間まで続いた。


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