prologue




―アラベルト・フォンツァ
青年は森の中にいた。
薄暗い森の中で一人でいた。
腰には革製のホルスターが二つ。そこにあるべきはずの物は
そこには収まっていない。
そこにあるべき物は彼の手の中にあった。
一つは銀。一つは黒。
手の中にある鉄の塊は彼の武器であり、誇りであり、魂であった。
―バンッ!!
乾いた音が森の中に響き、鳥たちがざわめいた。
彼はホルスターに銃を二丁とも戻すと次いで空を眺めた。
空は森の薄暗さとは違い、青く澄み渡っていた。
「…さァて、お仕事お仕事」
青年は笑みを浮かべて森の奥へと歩んだ。


―カッツロイ・エヴァン
彼は誇り高い騎士である。
誰よりも国を愛し、誰よりも国のために働く。
彼は騎士たちの憧れであり、尊敬に値する人間である。
その忠誠心は王も誇り、家族も誇り、彼も誇りである。
鎧が歩くたびに音を立てる。
彼が廊下を歩むたびに周りの騎士たちは尊敬と敬意を込めて敬礼を返す。
彼はその敬礼に眼差しを持って答える。
「隊長!出動準備整いました!!」
彼の前に鎧を着こんだ騎士が現れて彼に告げた。
それに彼は頷いて腰の剣を抜いた。
それは誓い、決意、誇り
「よし!第二番隊、出動!!」
そう発した彼は先頭に立ち、ふと空を眺めた。
空は珍しく青く澄み渡っていた。
彼は満足げに笑うと歩み始めた。

―メリー・コリアン
ローブに身を包んだ幼い少女が廊下を駆ける。
その少女を注意する者は誰もいない。注意できるものがいないのだ。
彼女は国一番の術者であり、王に使える存在だったからである。
何冊もの魔術書を持って少女は自室へと戻る。
普通の術者の教えでは少女は満足できなかった。
少女は誰もが認めざるを得ない天才という存在なのである。
それは少女にとって重荷であり、誇りである。
先祖は偉大な存在であり、少女はその力を受け継いでいる。
父も少女の成長に強く期待している。それは王も同じであった。
少女の小さな心は期待に応えなければならないという責任感でいっぱいだった。
「僕は天才なんだから…不可能なんてないんだ!」
それでも少女は天才であろうと努力を惜しまない。
カーテンを開け、空を眺めた。
空は少女の思いに惹かれたかのように青く澄み渡っていた。
少女は笑って本を読むのに没頭した。

―カール・マキシミリア
暗闇の街と呼ばれる場所があった。
彼女はそこに住む住人であり、魔獣と共に育った存在である。
人間と魔族のハーフ、ボーグと呼ばれる種族が彼女である。
暗闇の街はそのボーグたちが住まう集落。
彼女は同種と魔獣と共に育った。
人間を何よりも嫌っている。彼女だけではなくボーグは皆そうである。
ボーグという存在は彼女にとって苦しみであり、誇りであった。
『カール、ソロソロ行クカ…?』
「…ああ、行こう」
彼女は傍らの獣に問われると頷いて立ち上がった。
暗闇の底から空を見上げた。
見上げた空は悲しいぐらい青く澄み渡っていた。
彼女は決意に満ちた目で歩んだ。





そして今、機械に心を許す少年と宿命に立ち向かう少女が
この澄み渡る青空の下で出会おうとしていた。








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