最初は同情かと思った。オレと兄貴に両親がいなくて、かわいそうだと思ってオレに優しくしてるのかと。でもそれは一緒にいる時間が長くなるにつれて違うってことがわかって、オレはそんな風に木野を見ていた自分を恥じた。いつでも優しく、気配りができる木野に惹かれたのはオレ自身戸惑いはしたが、自覚してしまったものは仕方ない。だからこそ、余計に気に入らない。木野が円堂を愛しそうに見つめる目が。 「どう…したの?吹雪くん……?」 怯える木野をキャラバンに押しつけ、肩を押さえる力を強くすると木野は痛い、と震えた声で訴えるもオレはそんなの無視してやった。それにオレはアツヤなんだ。吹雪だと兄貴を呼んでいるかのような気分になってイライラしてくる。まぁ木野に悪気はないのだろうが。 「……なぁ、オレはアツヤなんだぜ?吹雪って言われると兄貴を呼んでるような気がしてスッゲームカつく。」 「あ……ごめんなさい。……アツヤ…くん。」 「それにさ、いつも円堂ばっか見やがって。お前さ、オレがいつも見てることに気づかないのかよ。」 「え……?」 ガラでもないこと言って顔が赤くなって心臓の音がうるさいほどにバクバクしてるのがわかる。兄貴みたいにさらりと言えたもんじゃないな、と木野に顔を見られたくないから首筋に顔を埋める。いきなりのオレの行動に木野は小さく悲鳴を上げるが、その悲鳴すら可愛いと思うオレは末期なんだろう。 「……なぁ、オレはお前が欲しい。どんな手を使っても、だ。」 「…で、でも私は……。」 「知ってるさ、円堂のことが好きなことくらい。だけどな、オレは本気なんだぜ?だから……」 木野の耳に小さく呟き、肩を押さえていた手を離して兄貴や円堂がいる場所へ戻る。解放された木野はその場に座り込んで顔を俯かせている。チラリとだけ見えたが、赤くなってるのを見るとどうやら脈ありっていう感じがしてなんだかいい気分になる。さて、明日から一之瀬や円堂といった相手に対して先に木野を手にいれられるようにしないとな。その為には兄貴にも協力してもらわないとな。 お前を必ず手に入れてやるよ。 ▼緋花さん/Learf |