僕は朝練をして共同シャワー室でシャワーを浴びて、自分の割り当てられた部屋に戻る所だった。

しかし、その戻る途中大きな洗濯カゴを持ち、屋上に向かう秋さんと鉢合わせし、手伝うことにした。

「ホント、秋さんって一人で無理なことでもやるよね…」

僕がそう言うと秋さんは苦笑した。

「他の人に手伝って貰おうっていう考えはないの?」

ほぼ、秋さんの体と同じくらいのカゴを持ち、その中には大量に積まれている洗濯されたユニフォームやタオル。

「皆朝練で疲れてると思うし、春奈ちゃん達は朝ご飯の準備してくれてるしね。それに、これは今日の私の仕事だしね…」

あぁ、もう。

何でそんなに秋さんは皆に優しいのかな。

でも、その優しさが醜いな。

その優しさは僕にだけ向けてくれていてくれたら嬉しいのに。

「しっかし、吹雪くんもお人よしだなぁ〜!見て見ぬ振りすれば良かったのに」

「……何で……?」

「だって、めんどくさいでしょ?手伝ってくれるのは有り難いって、思うけど。休憩したいと思うし……」

「そんなことないよ。それにあれだけで疲れたら、試合でもたないよ」

僕がそう言うと、秋さんは「ふふ、それもそうね」と笑った。

その笑顔に胸が高鳴る。

今この笑顔は僕しか見てないんだ、と思うと嬉しくなる。

「吹雪くんは優しいもんねー。特に女の子に対して。いつもリードしてくれてるみたいで。だから、吹雪くんモテるんだよね」

……今度は嬉しくないな。

秋さんは褒めてくれているあろう、その言葉は僕にとって嬉しくない。

「でも、私にも優しくしてくれるなんて思わなかったな。あ、もしかして、私のこと、好き?」

冗談っぽく笑って一歩後ろに歩く僕を秋さんは振り返った。

だけど、今はそんな余裕がない。

まさか秋さんの口から、冗談でも言われると思わなかった。

僕はただ、顔を真っ赤にするしかなかった。

そんな僕を見て、秋さんも「えっ……?あ、吹雪くんっ……?」と顔を赤くさせた。

「……僕がそう思ってると秋さんの口から聞けるとは思わなかった……」

「え、あ。違う、冗談だよ?ただ、吹雪くんがそんな反応するなんて……。吹雪くんでも、冗談で照れるんだね」

秋さんは慌てて弁明するように言葉を連ねる。

僕は我慢できないで、秋さんの腕を引っ張った。

秋さんは急に引っ張られ、カゴを落とした。

「ふっ、吹雪くん……?」


「……冗談なんかじゃないよ……?」

「え?」

「好きな人から自覚されてるなら、加減はしないよ?」

「えっ?!あ、あの……」

ニッコリ笑う僕に対して、秋さんは混乱するばかりだ。

そんな秋さんも愛しいと、僕は思ってしまう。

「そりゃ、好きな子に『私の事好きなの?』って聞かれたら、顔真っ赤にしちゃうよ?」

秋さんを引き寄せて、耳元で囁く。

秋さんの顔が更に赤く染まる。

「加減せず、ガンガン攻めていくから……覚悟してね?秋さん?」

僕は布告して、僕のせいで秋さんが落としたカゴから散らばった洗濯物をかき集める。

秋さんはまだ、顔を真っ赤にさせて突っ立っている。

「ほら、早く干さないと皺いっちゃうよ?」

秋さんは我に返ったように、カゴを持ち小走りで屋上へと向かう。

(照れ屋だなぁ…。そんな秋さんも可愛いけど)

そう思う僕の顔も頬に熱を持っていた。




『照れて悪いかよ』



▼如月氷雪さん/:XEROX

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