諸君、俺にはだれもが羨ましがるような可愛らしい彼女がいる。
だが・・・・




先ほどから彼女がぬいぐるみに夢中であまり俺に構ってくれない。
(・・・・・なんなんだこの気持ち)






「気に入ったのか?」
「えへへ。だって黒崎君からもらったものだもん」


そう言って俺のあげたクマのぬいぐるみを優しく抱きしめる。
じつにぬいぐるみが羨ましい。・・・・いやいや何を考えているんだ俺は。


「はあ・・・」


でもそれ以上に胸がもやもやする。
なんていうか、俺との時間が減るんじゃないかと思えば思うほどぎゅっとしまって苦しくなる。
そんないつも以上に眉間に皺を寄せる俺に対して井上はぬいぐるみに口を近づけた。


「ふふ。大好きだよ」


ふわりと花のように笑う井上は俺にではなく、クマに可愛らしく口づけをする。
・・・・・・ん?普通これは恋人である俺にやるもんじゃないのか?
そんなことを考えている俺に井上は気にせずまたクマのぬいぐるみにキスをし始めた。


「井上」
「なあに?黒崎く、」


話す暇もなく井上の口に自分の唇を重ねた。温かい感触。つい先ほどまで飲んでいたのか苺牛乳の味。


「・・・いや、その・・・・なんていうか」
「・・・えへへ。」
「え」
「嬉しいなあ」


「は?」思わず口に出してしまいそうになるのをぐっとこらえ、井上の顔をきょとんと見つめる。


「だって、つまりこれは」


嫉妬ってことだよね?


幼い顔がさらに幼くなるように無邪気に笑う井上。俺は見る見るうちに顔が赤くなっていった。
まさか無意識に嫉妬していただなんて。


「かっこわりい・・・」
「黒崎君」
「い、井上?」
「私、ちょっと嬉しかったかも」
「っ!」


ちょこんと首をかしげて井上はそう言った。
(ああ、なんて可愛いんだろう!)




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