5月14日金曜日 6時間目の体育館

「え〜、それでは今から前期生徒会役員選挙を行います」

ここが会場

「まず、書記は2年生から1人を推薦で決定済みです」

ザワザワと周りが騒ぎます

誰が書記になるだろう? なんてみんなで話してんのか?

「書記 2年B組 増矢司(ますや つかさ)君」

まぁ、俺なんだけどさぁ〜

「はい」

返事をして立ったとたんに周りが俺に視線を向ける

驚きの視線を・・・

そりゃそうだよな 俺、そんな真面目に授業受けてないもん

成績がいいからっていう理由だけで書記にするのやめてほしいわ〜

しかも拒否権ないし

「座ってください」

別に立たなくてもいいんじゃね?

なんて思いながらも、地べたに腰を下ろす

横の男が聞いてきた

「何でお前が書記なんだよ」

「俺だって聞きたいわ!!」

逆ギレしてやったぜ☆


「それでは、会長と副会長の選挙に移ります まずは会長から」

立候補者は3人とも男

「それでは右端の方から応援演説をお願いします」

眼鏡をかけたいかにも真面目そうな男の応援演説が始まった

いいことばかりをツラツラと喋る応援演説者

正直、クソだるかった

暑いし・・・つまんね〜・・・

もちろん、そいつが応援している奴の話もつまらない

「礼儀の正しい学校を作る」なんてありきたりなスローガン掲げられてもねぇ〜・・・

2人目は眼鏡こそかけていないものの、真面目で堅物そうな奴

応援演説も本人の演説も、つまらないそのものだった

「服装をきちんとした学校」ってそんな堅苦しい学校だったら、俺は余裕で登校拒否になってるぞ

とにかく俺のダルさはピークに近かった

3人目は普通の、どちらかというとお調子者っぽい感じの奴

応援演説も奴も全然真面目そうな人じゃなかった


「松本優大(まつもと ゆうだい)君の応援演説をする山城仁(やましろ ひとし)です」

変わった立候補者だったから、全員が顔を上げて、壇上を見上げていた

「松本君は正直言うと、みなさんも思っていらっしゃる通り、真面目な人ではありません」

やっぱり真面目じゃないのか

ってか、それをここで言うか!?

「見るからにチャラそうだし、頭悪そうだし、デリカシーの欠片もなさそうな奴です」

そこまで貶すか、山城仁!!

「僕も、何度も彼の無頓着な言葉に心折れかけたことがあります」

そんなになるまで、何を言われたんだ!!?

「ですが、根はとても優しいです 根は!!」

おっと、根を強調してる

表面上は優しくないってか?

「他の人が運んでいる提出物を、半分持ってあげたり」

おっ いい人っぽいじゃん

「鉛筆を忘れた人に自分の一本しかない鉛筆を貸してあげて・・・」

優しいが、自分はどーしたんだ!?

「他人から借りたシャー芯でテストを受けたり」

努力家だな、おい

よくボキボキ折れても集中力掻けなかったよ

マジ尊敬

「ゴミ箱に眼鏡を落としてしまった人のために、朝早くに来てゴミ箱を漁ったり」

漁ったの!? 早朝から!?

校長先生がみたら間違いなく変質者だと勘違いされるシチュエーションだぞ!?

「誕生日の友達のために、ケーキを焼いてプレゼントしたり」

家庭的!!

「こんな感じでとても優しい人です」

優しいのは認めるが、色々とツッコみどころが満載すぎるぞ、おい!!

「勉強も運動も顔も平均を下回る彼ですが・・・」

顔って言ってやるなよ

そんなこと言われてもドヤ顔して座ってられるあんたもすごいよ、松本優大!!

「彼が会長になったらきっと、この学校はすごく明るくなると思います」

確かに、それはそうだな・・・

逆に明るすぎて大変そうだけど

「ぜひ、松本優大君に清き一票をよろしくお願いします!!」

そう言ってお辞儀をした彼に、拍手が沸き起こった

「何だ今の演説 めっちゃウケるんだけど」

「おもしろ〜い!!」

「あんなに応援する人を貶すなんて、初めて見た」

みんなも彼の演説に釘付けになったようだ

さてさて、これは期待が高まってるよ、松本優大

このプレッシャーに押しつぶされずに演説できるのか?


「ご紹介に預かりました 松本優大でございます」

どこの市長選挙のお方だよ

「すばらしい応援演説をしてくれた、山城仁にお礼を言いたい ありがとう☆」

いやいやいや

だいぶ、貴方のこと貶してましたよ?

「さてと、先程山城仁が言ったように、僕は真面目な人ではありません☆」

うわっちゃぁ!! 本人言っちゃったよ

しかも語尾に☆までつけて!!

「僕はボート部に所属しています 今の2年生はご存知の方も多いと思いますが・・・」

ん? 俺ら?

「君たちが1年生のときのクラブ紹介 あれのボート部の紹介のときに、ドピンクと黒のストライプ全身タイツを着ていたのは、このワタクシです!!」

あんただったのか!!!!

あれは忘れもしない!!

部長さんのクラブ紹介の背後でドピンクと黒のストライプ全身タイツを着た人が、必死にボートこぐ真似してたんだ!!

衝撃的すぎて思考が停止したわ!!

「僕が会長に立候補するといったとき、たくさんの人から言葉を貰いました」

言葉?

「友達Aから『お前・・・正気か?』」

どこのアニメのセリフだ

「友達Bから『どーしたん? 何か悩みでもあったん?』」

悩みがあったら会長に立候補するのか

「友達たけしから『頑張れ』」

1人だけアルファベットじゃなくて本名来たーー!!!

「あっ、これ本名じゃないです☆」

まぎらわしいわ!! 

ありそうな名前出してくんな!! なぜ偽名にした!!

「友達Dから・・・」

Cは飛ばすのね

「『あっはっはっは』」

思いっきり笑われてるじゃねーか

「そして、今朝はボート部の卒業された先輩から・・・」

情報網早いな、先輩

「メールで『八高崩壊(笑)』」

崩壊まで推測しちゃってるよ先輩!!

確かに八ツ森高校崩壊しちゃいそうだけどさぁ!!

「そんな僕ですが、やるときはやります!!」

おぉ

「今がそのやるときです 僕の力で八高を必ずや変えてみせます」

いいこと言うね〜

「楽しくて、崩壊しない程度に明るい高校作りを!!」

崩壊しない程度て(笑)

「皆様、清くなくてもいいです!! 一票を・・・!!」

欲望心、丸出しじゃねーか

清き一票を貰おうぜ

「松本優大に、一票をお願いします!!」

大きな拍手が体育館にこだました

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