神(かみ)主

 小狐丸が去り、後ろの布団から三日月宗近が身体を起こした。
「ははは。小狐は、先ほどまで俺たちが同衾していた事に気付いておらんのだろうな」
「お前の存在にも気付いていなかったぞ。それほど私との子ができたのが嬉しかったのだろう。まあ、勘違いだったが……」
 耳をしゅんと垂らした姿を思いだし、今度こそは確実に孕ませてやろうと秋吉は心に決める。
 腕を組んで障子の方をぼうっと見ていると、裾が引かれた。目を向けると、三日月がちょいちょいと手を招く。
「なんだ」
 布団に膝をつき、瞳の中に在る三日月を見つめた。
「…………」
「三日月?」
「…………」
「ええと……」
「…………」
 無言で見つめ合うこと彼此20秒近く。三日月の目が細められた。
「ははは、知っているか主よ」
 鼻先がつきそうな程に三日月の顔が寄る。襟足が梳かれ、三日月の吐息が秋吉の唇に触れた。
「相手と7秒以上見つめ合っていられると、夜伽ができるらしいぞ」
「私とお前はもうできているだろう」
「はっはっは、そうだったな!」
 離れると、三日月は小狐丸と同じように自分の腹を摩った。
「……俺の腹には、子は宿らないのか?」
「本丸が子沢山になってしまうよ」
 本日何人目の憂い顔だろう。だが眉を下げて切なげに微笑む三日月は、様になっている。


2015/02/23
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