【攻】颯太:低身長、それでも169cm。短気。
【受】高那:長身。193cm。からかった時の颯太が可愛くて好き。からかいネタは9割が身長のこと。
 攻め受け要素はない。


 イライラ。
「今日も、他のクラスの女子にびっくりされてさあ」
 イライライライラ。
「高那くんは本当に背がおっきいよねえ〜、って」
 隣を歩くデカブツが、今日の入学式で身長の高さに驚かれたことを延々と話している。
 高那とは保育園からの付き合いだ。小学校までは同じくらいの身長だったのに、中学に入学した時にはもう背を越され始めた。
 それ以来、友人にも高那にも身長の話題を出されたら、俺はあからさまに機嫌を悪くする。ガキっぽいけど。
 ドンドン背が伸びて現在193cmの高那とは対照的に、俺は169cmという惜しい数字で止まってしまった。
 22時から2時の間はちゃんと寝てたっていうのに、成長する気配はない。DNAの影響だとしたら残酷だ。
「――って知ってる? 6歳までの食事で身長が決まるんだって」
「ア〜〜〜さっきからなんなの!? 俺への当て付け!?」
「もおー颯ちゃん怒らないで? 短気だからそんなに背が小さいんだよ?」
「おまえ殺すぞ」
「きゃーこわーい」
 デカい図体で、両手を口元に当てて高那がキャピキャピする。このぶりっ子相手に、殺意が沸いてこない方がおかしい。
 隣に並びたくなくて、歩きを早める。だが169cmの早足に、193cmは走らなくても追いつくらしい。全くもって腹が立つ。
 待ってーと高那の声が聞こえるが、お前を待つ必要を教えて欲しい。
 俺が待つ間もなく、高那は再び隣に並んだ。身長と同時に足の長さを恨みながら高那を睨み上げると、難しそうな顔をしていた。ムムム……と考えこむように顎に手を添える。
「颯太って……、背はちっちゃいのに、ちんこはおっきいよね」
「〜〜〜ッ、黙れクソが!」
 まじめに話を聞こうとし俺がバカだった。
 ていうかいつ見たんだよアホ。変態が。着替えの時ですらパンツ脱がないぞ。連れションだってしない。
「えーだって本当におっきいし」
「いつ見た」
「颯太が寝てる時っ!」
「俺がおまえの前で寝た時あったか?」
「あったよ。俺がいたずら書きしたの覚えてないかな」
「……!! あ、あの時……に……?」
「うん」
 一度だけ、高那が家に遊びに来た時に、ゲームに夢中になってる高那の横で寝たことがある。中2の時だったか。
 起きたら既に高那の姿はなく、ゲームがテーブルの上に綺麗に置かれていた。
 母さんが飯を用意してる時間だから下に降りると、丁度台所から出てきた母さんが俺の顔を見るなり指を差しながら笑い出した。
 その瞬間、嫌な予感がして洗面所に走る。鏡を見た俺の血管は、いとも簡単にブチ切れた。
 前髪をずらしたら額に『肉』、頬には赤いマジックで丸く塗りつぶされていた。唇も赤く塗られ、鼻毛を書かれ眉を太くされ睫毛を足され……。
 こんなことをするのはタイミング的にも性格的にも高那しかいない。
 その時に決めた。コイツの前では熱が出てようと絶対に寝ない。
「落書きの他にも悪戯してやがったか……しかも……見られ……」
「大きいからいいじゃーん」
「そういう問題じゃねえんだよボケ」
 高那の顔がうるさい。今日はずっとニコニコしている。
「なあ、なんで今日そんなに機嫌いいの」
「あ、気づいた? 実は良い知識を身に付けまして」
「碌なことじゃないんだろうなぁ……」
「知りたい?」
「別に」
 要らない知識は聞かなくてもいい。高那が仕入れてくる知識は大体がクソだ。
 知りたくない、と顔を背けていると、さっきより高那のウザさが増す。俺に影を被せながらぐるぐる回り、「知りたいでしょ? 知りたいよね?」と口を閉じてくれない。
 治まってほしい。
「あーしょうがないから聞いてやるよ」
 すると、高那は歩みを止めた。腰に手を当てて胸を張る。えへん、とドヤ顔をしながら俺を見下ろした。
「精通が早い人ほど背が小さいんだって!」
 やっぱり殺す。


2013.11.26.
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