2.0

あぁ…疲れた…
なんで紫さんってこんなにいたずら好きなんだ…
ちゃんはドライヤーをかけながらぐったりしていた。


お風呂にはいるなり、浴室泡だらけだし…助けを呼んで…私タオル巻いてたけど「きめ細かい肌ー」なんてセクハラ…恥ずかしい。
さっきはさっきでお風呂あがりの私にTシャツ着せたい、なんてニッコニコで来て。
すっごい嫌な予感してたら案の定、普通には着せてくれなくて。
着せたい、なんてカップ付きのキャミソールで良かった…
じゃなくて…腕通して顔面だけ出すかたちにされて「ジャミラ」って。
「昔ウルトラマンと戦った怪獣なのだよ!」って…私2000年代だよ産まれたの!
第一紫さんも知らないでしょ!
くそぅ…と思いながらも、ジャミラごっこして追いかけ回して…それが3分前の出来事で。

追いかけ回してたらいきなり止まって、くるっとこっち向いて、かがんでジャミラになってた首をなおしてくれて、髪をTシャツから丁寧に出してくれた。
大きな手が首もとで動いてて、口元にっこりなあの顔が近くにあって。
目が合って、いつもみたいに笑ってくれたらいいのに笑ってくれなくて。
息が止まった。
唇が動いて「ドライヤーとビール、机の上に置いておくから」と頭ぽんぽんされて、ご自身はお風呂に行かれたようだ。
これが1分前。
まだ心臓がバクバクしてる。





あれもいたずらの1つだろう。
私をドキドキさせて、きっとお風呂の中で笑ってるんだ。
そうに違いない。
ご丁寧にビールは中身が全部ジンジャエールだし。
二重にガッカリだよ。

絶ッ対普通にしておこう。




文句の1つでも言ってやろうと、紫がでてきた気配がしたので振り返ってみると
「紫さん、ビールのな……わ、わ、わ」
髪を降ろして、
メガネを外して、
上半身裸で、
タオルを頭にかけた紫が出てきたので、前を向いて
「う、う、上の服着てください」とまたドライヤーをかけだした。


「ちゃんおれにも上の服着せてー」
「甘えるなおっさんッ」
「暴言!」
ドライヤーが熱い。
髪が熱い。
顔が熱い。
普通にできてない。
悔しい。
「ドキドキしてんの?」
いつの間にか目の前にニヤニヤしている紫がいた。

「わ」と声をあげて少し仰け反る。

ぷぷぷと笑って「ドライヤーおれにもしてよ」と言ってちゃんの足の間に座る。
ちゃんがあっけにとられていると
「はい、して」と首だけこちらに向けて笑顔で言う。
顔を前に向けてドライヤーの風がくるのを待っているようだ。

お見通しですか…。

男の人にしては長い髪をふわふわさせながら乾かす。
いつもは結ってあるこの髪に触れている。
メガネをかけてない目で私を見る。
みんなが知らない紫三世。



肩幅こんなに広いんだ。
腕の筋肉すごいな。
背中とかヤバイかも。
髪おろしてるとセクシーだな。

意識しなかった日はなかったけど、こんなにも男の人なんだな。


そうです、紫さん、私、ドキドキしています。


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