Clap!
毎度ありがとうございまし。





空いた部屋で勉強したいんだけど、とかさらに問われると気分を変えたくて、なんてもっともらしいことを言って目の前にいる真壁ケンジはいつもこの広い敷地のどこかを借りる。

どこかを借りては私に連絡が来て、ドアをノックして中にいるその人が入れてくれる。
その時に誰にも見られてないことを確認するのを忘れずにして、部屋を空室だと表示させて、カギを締めるのも忘れない。


部屋に二人きりだからといってもキスしたり、イチャついたりはしない。
決してケンジからはしない。
大概私が痺れを切らしてキスをしてしまう。
そしてそれを待っていたと言わんばかりに唇を食べられる。
彼はそういう人だ。


こうして過ごす時間は、大体の時間はケンジが仕事をしている横顔を見ていることが多いように思う。
今は横顔を見つめる時間なのだ。
「ねぇケンジ」
「ん?なあに」
ケンジはキーボードを叩きながら、視線をパソコンに向けたまま応えている。



「もうこういうのやめようって言ったら、どうする?」
キーボードの音が止まる。
顔を上げてこちらを見る。
2、3瞬きをしたあと
「そう、さみしくなるね」
またキーボードが動き出す。
カタカタ、と。
彼は、そういう人だ。


相変わらず視線はパソコンのままの彼に手を伸ばす。
「ん、なに?」
手を彼の頬に伸ばして測っている。
彼の薄く生えたうぶ毛を。
口周りの剃り残した髭を。


私は測っている。
あなたの愛を。
「そう、さみしくなるね」に含まれた本当の意味を。


「うん、さようなら」
上手く測れなかった手の先を撫でながら、私は席を立った。
ひどく冷たい、指先だった。




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