「…まぁ、じゃ、十四郎さん今日も練習に来なかったの?」
先ほどまで、弟のグチを聞いていたミツバが、初めて口を挟んだ。
「はい。絶対どっかでサボってるんです!」
総悟が頬を膨らませる。
「そーちゃん。十四郎さんはそんなことするような人ではないと思うわ?」
相変わらずの弟に、ミツバはクスクスと笑みをこぼした。
「近藤さんに聞いても教えてくれないんです。」
「あら。近藤さんは理由を知ってるの?」
「…多分。」
ミツバも総悟も考え込んで、黙ってしまった。
それから数日。
「姉上、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう。」
どこかで摘んできたのだろう。総悟が小さな花束を差しだす。ミツバはにっこりと微笑んで、それを受けとった。
「さ!そーちゃん、お稽古の時間でしょう?」
「はい!姉上、稽古が終わったら、みんなでお祝いしますので!」
「まぁ、嬉しい。楽しみにしてるわ。」
総悟は笑顔で稽古に出掛けた。
「さてと!洗濯を…」
その時、ミツバは縁側に何かをみつけた。
「これは…!」
四つ葉のクローバーだった。
結んであるリボンに、『ミツバへ』とかかれている。
差出人の名前は無かったが、ミツバはすぐに誰なのかわかった。
四つ葉を見つめると、照れ屋な彼の顔が浮かび、思わず微笑んだ。
幸せのしるし
END
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