「ムカつくアルゥゥウ!」
の、怒鳴り声、同時に飛ぶ目覚まし時計。
「あ゛ーっ!!ちょ、お前なにしてんの!銀さんの目覚まし時計がーっ!」
「神楽ちゃん、もう壊す物は何もないでしょ。とりあえず座って落ち着きなさい。」
「だって姉御…」
「分かってるわ。聞いてあげるから」
「姉上、できれば壊すものがなくなる前に止めて欲しかったです」
「いつまでも過ぎたことウダウダ言ってんじゃねーヨ駄眼鏡」
「誰のせいだぁぁぁあ!…ってか、その台詞ソックリそのままアンタに返すよ!」
「冗談はこれくらいにして、何があったの神楽ちゃん?」
「…アイツが…ムカつくアル」
ブスッとしながら、神楽は拳を握り締めた。
「アイツって…」
「名前もいいたくないアル」
「もしかして、沖田さんのこと?」
すこし間をあけてコクリと頷いた神楽。
「私、嫌いヨ」
「で、何があったの?」
「…3日前…チョコ食べられたアル」
「…は?」
新八は間抜けな声をだす。が、神楽は真剣だ。
「2日前はジュース…昨日は酢昆布奪われたネ!!その上『マズい』とかぬかしやがったアル!」
(別にそれぐらいよくね?)と思った新八とは対照的に、妙は真剣だった。
「しかも今日も…」
と、言いかけて、神楽の顔は瞬時に赤く染まった。
「奪いやがったアル…」
(何かされたわね、これは…)
険しい表情で、妙は神楽を見た。
「あ゛ぁぁぁあ!思い出しただけでも腹が立つネ!
アイツは…女の敵アル!!!
嫌い…大っきらいアルゥゥウ!!!!」
「わかった!わかったから椅子置いて!」
再び神楽を落ち着かせた頃、今まで黙ってジャンプを読んでいた銀時が口を開いた。
「つーかよぉ、嫌いならほっとけばいいじゃねぇか」
「それは…アイツが突っかかってくるのが悪いアル!」
「まぁ、俺ァお前らガキのケンカなんぞに興味はねぇけどよ。本当に嫌いならヤローが突っかかってきたって、無視すりゃあいい話だろ。」
「……」
「そうね。沖田さんもそのあたりわかっててやってるんじゃないかしら?」
「…え…?」
意味が分からない神楽は首を傾げるが、妙はそんな神楽をニコニコと見ていた。
「男の人って、そういう生き物だもの、ね、銀さん。」
銀時はチラッと妙を見たが、すぐに顔はジャンプの影に消えた。
「まぁな」
(嫌いなら無視?)
(わかっててやってる?)
頭の中は?マークだらけだった。
(意味分かんないアル。でも、)
「あれ、神楽ちゃんどこいくの?」
「散歩アル!」
「遅くなっちゃダメよ」
「ウン!」
神楽は家を飛び出した。
行き先はただ一つ…
「…チャイナ…」
「奪い返しに来たアル」
「…は?」
「お前が…私の…ファーストキス、奪ったから、奪い返しに来たアル」
「何、言っ…!!」
重なる二人の影を、夕焼けが美しく包んでいた。
END
オマケ
「さて、じゃあ僕も買い物にいってきます。姉上、銀さんが買い物行かないように見張っててください。今月ピンチなんです」
「えぇ。任せて」
「げ。なんか甘いもん食べに行こうと思ったのに」
「あら。あるじゃないですか。…はい、
卵焼きどうぞ」
「・・・・」
END
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