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雨のち…


ついてない

本当についてない日だ、今日は






朝から土砂降りの雨だった。こんなに降られては、朝練がないどころか、2、3日はまともな練習ができない。
しかも、朝の占いは最下位だし、バスに乗り遅れるし、弁当を忘れるし…

大河は苛立っていた。

そして事は4時間目の自習の時間に起こった。

『…っ!…清水くんなんか…
大っ嫌い!』




きっかけは、些細な事だった。
大河の嫉妬、だ。

中学時代から寿也がどんなにすごかったのか、楽しそうに話す綾音をみて、なんだかいらついた。


「──それでね、佐藤先輩が…」

「…うるせー」

「…え…?」

「『佐藤先輩』『佐藤先輩』ばっかりうるさいんだよ…
そんなに佐藤が好きなら海堂に入ればよかっただろ!」

綾音の表情が困惑したものになる。

「清水く、」

「…あぁそうだった、海堂ではマネージャー募集してないから、かわりにうちの野球部入ったんだっけ」

皮肉っぽく大河は言った。自分が思ってもない言葉が勝手にでてくる。悪いのは自分とわかっていながらも、口を閉じる事が出来なかった。

「本当は聖秀よりも海堂を応援してんじゃないの?」

「…!そんなわけないでしょ!?」

「はっ、どーだか!佐藤佐藤言ってるじゃん。正直迷惑なんだよね」

「…っ!」

「そんなに好きなら本人に直接言えよ!自分で言う勇気もないくせに…お前なんか…佐藤には似合わねぇよ!」

ハッとした時にはもう遅い。

綾音は一瞬傷付いたような表情を見せ、目に涙をためながらも大河を睨んだ。
今やクラス中の視線が二人に注がれていた。

「…嫌い」

「…え」

「…っ!…清水くんなんか…
大っ嫌い!!」

綾音は教室を飛び出して行った。

「ちょ、綾音!」

綾音の友人が綾音を追いかけ、嫌な静けさが残る中、四時間目終了のチャイムが鳴り響いた。




「大丈夫?綾音…」

「うん…ありがとう…」

屋上へ続く階段に、綾音と友人は腰掛けていた。
背中をさすられ、綾音はようやく落ち着きを取り戻したようだった。

「私…何か清水くんを怒らせることいったのかな…」

「……綾音…清水くんに佐藤先輩の話してたでしょ?」

「…え…うん」

確か彼女とはかなり席が離れていた。会話はほとんど聞こえないはずだ。

「聞こえてたの…?」

「…え、あー…うん、まぁね」

友人は言葉を詰まらせ、そう返事をした後、意味ありげに笑った。


「…でもまぁ、それなら清水くんが怒るのも無理ないわね」

「え」

「綾音が佐藤先輩憧れてるのは知ってるよ?でもさ、清水くんもおんなじ野球部員じゃない。比べられてる気がしていやだったんじゃないかな?」

「私…そんなつもりで…」

「言ったんじゃないこともわかってる。清水くんだってわかってるはずだよ」

綾音がばつが悪そうに俯くと、友人はにっこり笑った。

「綾音」

「…?」

「清水くんはさ、綾音が佐藤先輩ばっかり褒めてるから拗ねてるんだよ」
「拗ね…えぇ!?」


顔を赤くしてあたふたする綾音に
友人は可笑しそうに笑った。

「たまには、さ。素直になるのも大事だよ。相手はあの清水くんだしね」








「なんだよ、服部」

大河は隣で笑うチームメイトで友達の服部を睨みつけた。

「悪ィ悪ィ…。だってお前面白れーんだもん」

「はぁ?」

「わかりやすすぎ」

謝りながらもなお笑いつづける服部。

「もっと素直になれよ、じゃなきゃマネージャーに嫌われんぞ?」

「…もうすでに『大嫌い』って言われたんスけど」

「あぁ、そうだったな」

また面白そうに笑う服部に、大河はため息を漏らした。







放課後練習は休み。
大河は憂鬱な気持ちで下足ロッカーへと向かった。

(あ、)

前方に見知った姿を見つけ、大河は立ち止まった。
彼女は下履きにはきかえてはいるものの、なぜか傘を持っていないようで、入口でうろうろしていた。

自分も下履きにはきかえながら、いろいろと考えを巡らせる。そして悩んだ末…





「…、マネージャー…」

「…!し、清水、くん…」

声をかけた。昼間のことのせいだろう、二人の会話はぎこちない。

「…傘は?」

「…あさ、壊れちゃって…」

「…ふーん…
………はい」

そういって差し出された傘をみて、綾音は驚き、大河を見た。

「え…?はい、って…」

「風邪引くから」

そういって大河は無理矢理綾音に傘を持たせ、雨の中に駆け出そうとした。が…


「…ま、待って!」

制服の裾をつかまれ、大河は引き止められた。

「それじゃあ清水くんが濡れるじゃない!」

「俺は平気だから…」

「ダメ!肩冷やすでしょ!?」


「じゃあ…!
…二人で、入れば?」

「…えっ…」

大河の言葉に思わず綾音は固まる。

「それなら二人とも濡れないっしょ」

「…う、うん…」

戸惑いながらも綾音は傘に入った。









気まずい沈黙が続く。
二人ともどうすればいいのかわからなくなっていた。
しかし

(『素直になるのも大事だよ』)

(『もっと素直になれよ』)


今なら、言えるかも知れない。

素直な言葉を…



雨のち…
(ごめん)
(ごめんね)

雨が上がるまであと少し



End



澪さん、30000打おめでとうございます!
いかがだったでしょうか…!

私的にはいつもよりかはましな作品が出来上がったかと少しホッとしてたりf^_^;
まぁ、やっぱりグダグダですが(笑)

綾音ちゃんの友人のモデルは私の友達です。由美ちゃんにそっくりなんですよ〜(^O^)
服部くんは絶対大河の気持ちに気付いててからかってるイメージがありますねw彼がキューピッドになってくれればいいのになぁと思います(^-^)

ではでは、おめでとうございました!