昼休み。
綾音は自身の携帯を険しい表情で見つめてはため息をつき、ボタンの上に親指を添えては離し…を繰り返していた。
宛先はクラスメートの清水大河。本文には『好き』の二文字。
親友とともに、告白を決意してから、もう一週間が経とうとしていた。
「……ハァー…」
告白しようとは思うのだが、相手はあのモテモテな野球部キャプテン。
告白以前に、彼女がいたっておかしくない。
それに、大河は綾音が佐藤寿也を好きだと思っているし、本人は年下にしか興味がないと言っていた。
今の関係を壊したくない…
そう思い、なかなか勇気がだせないでいた。
「…ハァ…」
トントン
突然肩を叩かれ、綾音は飛び上がった。
勢いよく振り向き、綾音は安堵の表情をみせた。
「…!な、なんだぁ…ゆみちゃんかぁ…」
「なんだとはなによ〜。…何?だれか来られると困る人でもいるわけ?」
ニヤニヤしながら聞いてくる親友に
(ゆみちゃんには敵わないなぁ)などとおもい、一つまたため息を漏らし、綾音は口を開いた。
「…って、綾音!あんたまだ告白してなかったの!?」
「ゆ、ゆみちゃん!声大きいよぉ!」
「だって…!」
呆れたようにゆみは綾音を見た。
「…綾音…わかってると思うけど、清水くん、モテるんだからね!」
「…わかってる…」
「早くしないと…誰かに取られちゃうわよ」
「う゛…」
ゆみの警告で、綾音はますます焦り出した。
「とにかく、『善は急げ』!、よ!さっさと告白しちゃいなさい!」
「…ゆみちゃん…なんか違う気が…」
「違わないわよ!…あ、いけない!アタシ次移動教室だから…
じゃあ、綾音!がんばんのよ!」
そう言って、ゆみは嵐のように去っていった。
「そう言われても…」
携帯の画面に映る『好き』の文字を睨み、綾音は深呼吸をした。
「よし!」
そう気合いをいれて、送信ボタンを押そうとした時だった。
「…なにやってんの、マネージャー?」
「ひゃあ!」
ポチッ
突然かけられた声に、綾音は飛び上がる。そのひょうしに送信ボタンを押してしまった。
あまりに集中しすぎて背後にいたことに気づかなかったのだ。
「きゃぁぁあ!」
中止ボタンを押そうとするも、時すでに遅し。
画面に『送信完了』の文字が現れたかとおもうと、大河のポケットから響く着メロ。
「あれ、メール…?」
「し、清水くん!そ、そそそのメール…消して!…というか消させて!」
「え…あ、マネージャー、さっき俺にメールしてたの?」
「う…えっと…あの…そう!間違ったの!宛先間違っちゃって!だからお願い…!」
真っ赤になりながら涙目で懇願する綾音に大河は渋々携帯を渡す。
携帯を受け取り、綾音はホッとした。
メールボックスは開かれていない。メールは読まれずにすんだ。
綾音は安心したような残念なような微妙な気持ちになりながら、自分が出したメールを消去し、携帯を大河に渡した。
「なに?そんなに見られると困るものだったんだ?」
「うん…私が…というか、きっと清水くんが困るから」
「…え…?」
ハッとして、綾音は真っ赤になりながら『なんでもない!』と笑った。
そんな綾音を見つめた後、大河は携帯を開いた。
「次の社会、移動だって。急いだ方がいいよ。じゃあ」
そう残して、大河は足早に教室から出て行った。
(また言えなかった…)
綾音がそう思った瞬間、今度は綾音の携帯が鳴り響いた。
メールボックスを開き、差出人と本文を見た瞬間、綾音の顔が真っ赤に染まった。
そして綾音はそのまま授業の用意を掴み、教室から駆け出したのだった。
END
虹色さん、お待たせして申し訳ありませんでしたァァァア!!
その上、キャラ別人…(泣)
本当にごめんなさい!
綾音ちゃんが必死に携帯を見つめるので、気になった大河は、後ろからこっそり覗いてて、赤面してるけど、綾音ちゃんは気づかない…みたいな二人を書きたかったのですが…撃沈しました(ノ△T)
お待たせしすぎてごめんなさい!
こんなものでも喜んで頂ければ嬉しいです。
リクエストありがとうございました〜!
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