顔が、熱い。
頭が、痛い。
体が、だるい…
重たいまぶたを開くと、見慣れた天井が現れた。
(俺の、部屋?)
回らない頭を必死につかう。
今日って…何曜日だっけ…
時間は…学校…部活…
それよりも、何か感じる違和感。
大河はゆっくりと周りへ目を走らせ、驚いた。
そこには、いるはずのない人物がいた。
「…マネー、ジャー…?」
「あ、起きた?清水くん」
「何…?なんで…?」
わけがわからない。大河はゆっくりと体を起こす。
「…てか、…なにしてんの…」
「…あ…えーと…」
彼女の周りには綺麗に畳まれた衣服。間違いなく最近自分が脱ぎちらかしたパジャマやジャージだった。
恥ずかしいやら申し訳ないやらで、大河は逃げ出したい衝動に駆られた。
「ご、ごめんね、勝手に…」
「…や…その…ありがと」
大河が気まずそうに呟くと、綾音はキョトンとしてから、ふふっと笑った。
「あ…熱はかろっか。体温計持ってくるね」
そう言って、綾音はリビングへ下りて行った。しばらくドアを見つめていた大河はハッとして、重たい体を引きずり、見られては困る物を片付けた。
そしてベッドに戻り、ため息をついた。
綾音が大河の家へやって来たのは今回が初めてではないが、今までは服部や先輩など、野球部員の誰かと一緒だった。
彼女一人でくるなんて、初めてだ。
しかし、今の大河にはそんなことを考える余裕もなく、とにかく見舞いに来てくれた嬉しさと、醜態を晒してしまったことの恥ずかしさで、頭の中はいっぱいだった。
「これだよね、体温計」
『リビングの机の上にあったよ』と、渡され、大河は体温計を脇に差し込んだ。
「…姉貴は…?」
「さっき、スーパーに行くって。もう戻ってくると思うよ。」
「…ふーん…」
机の上の時計に目をやると、昼の3時。
いつもなら学校で授業を受けているはずだ。
「…マネージャー…授業は…?」
「え?今日は午前中で終わりだよ?」
「…あぁ…そういえば…
…あ」
「あ、はかれた?何度だった?」
体温計を渡された綾音はその数学をみて、困ったように大河をみた。
「…まだ高いね…汗もすごいし…」
おしぼりを変える為に綾音は立ち上がった。
「清水くん、着替えられる?」
「…ん…」
「おしぼりかえてくるから、その間に着替えてね」
コクリと頷いた大河を残し、綾音は再びでていった。
「…清水くーん、着替えられた?」
「………」
「…?」
ノックをしても返事がない。
不思議に思った綾音は、そーっと部屋のドアをあけた。
ベッドから、規則正しい寝息が聞こえてくる。
綾音はゆっくりとベッドに近づいた。
「…ねて、る?」
「………」
子供のような大河の寝顔をみて、綾音は思わず微笑む。
大河の額に優しくおしぼりをのせると、床に座り、彼のベッドに寄り掛かって目を閉じた。
(素直な清水くんもかわいいけど、
やっぱりいつもの意地悪なほうが清水らしいなぁ…)
(早く、元気になってね)
END
← →