「あ、」
下校途中、突然声を発した綾音に大河は目を向けた。
「…どしたの?」
「えっ!あ、ううん!ごめんっ…どうでもいいことなの」
声が出ていたことに気づいていなかったのか、綾音は驚いて大河を見て慌てて首を振った。
「いや…なんか途中で止められたら逆に気になるし」
「う゛…ほ、ホントに、つまんないことだよ?」
そういって綾音が指差した先には一人の女生徒。
「あの子がかばんに付けてるキーホルダーね、ガチャガチャのやつなの。私が好きなシリーズ…ずっと探してるんだけど、家の近くにはおいてないみたいで…」
『どこでみつけたのかな』と羨ましそうな綾音を、大河はいつものように子供っぽいとからかいながらも、綾音と分かれた帰り道、家に着くまでにあるすべてのガチャガチャの機械に目を向けていた。
しかし、目当てのものは見つからなかった。
が。
「姉貴…それ…」
「ん?」
玄関前で出かけようとしていた姉と鉢合わせした大河は思わず目を見開いた。薫のかばんに、まさに大河が探し求めていたシリーズのキーホルダーがついていたのだ。
「これ?可愛いだろ?」
『友達とお揃いなんだ』と話す薫。
正直姉に頼るのは惜にさわるが、この際し仕方がない。
「それ…そのガチャガチャさ、どこにあった?」
「え?三船駅前のデパートだけど…」
「ふーん」
たいして興味がないふりをする。薫が何かいいたそうだったが、聞かないうちに大河は急いで家に入り、荷物を置き、着替えた。
そして財布と自転車の鍵だけを持ち、部屋を出た。
「えっ…わざわざ探してくれたのっ?」
翌日、『はい』と少し照れたような大河に差し出されたキーホルダーの数々を見て、綾音はとても驚いた。
「…別に…帰り道にあったから…」
わざわざ『探し回った』なんて言えない大河はそう言ってごまかした。
「ごめんね、気を遣わせちゃったみたいで…
あ、お金…!何円だった!?」
「あー…、いいよ別に。それくらい」
「でも…」
「いいって」
半ば強引に綾音の手に押し付ける。
「普段お世話になってるし、お礼だと思って受けとってよ」
そういうと、綾音はキョトンとして微笑んだ。
「じゃあお言葉に甘えて…」
喜びわ抑えているのか、綾音はウズウズしながらそれを見つめてはソワソワしている。
「…ねぇ、清水くん、」
「ん?」
「これ、全部一人でガチャガチャしたの?」
「……」
黙りこんでしまった大河を見て、綾音はそれを肯定だと受けとった。一人で焦りながら可愛いガチャガチャをする彼を想像して吹き出しそうになったが、プライドの高い彼のことだ。笑ったりなんかしたらものすごく怒るに違いない。それに、そんな彼が自分のために、わざわざ恥ずかしい思いをしてまで、これを手に入れてくれたことが嬉しくて仕方がなかった。
綾音は貰ったキーホルダーをキュッと握りしめた。
「ありがとう」
幸せそうな笑顔を見せた綾音に、嬉しくなった大河も口元が緩んだ。
For you(君の笑顔がみれるなら、)久しぶりの更新でした。
相変わらず文才なくてごめんなさい。
綾音ちゃんにはガキとかいいながら彼女の為に一生懸命ガチャガチャやる大河は可愛いと思う(笑)
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